男装柱-弐-【不死川実弥】

第64話 ページ17

(不死川実弥side)


「！？！！！？
貴様何故それを…っ！？

…ではなく！！
何故俺の話をする！
俺はお前の話を聞いてやると言ったんだが！！」



へェ、伊黒が動揺してやがる。珍し。

よく2人でいる所見かけんなァとか、
俺と一緒にいるときにやたらと甘露寺の話ばかりすんなァとか思っちゃいたが、まさか好きだったとは全然気づかなかった。

前に悲鳴嶼さんがポロッと漏らしたのを聞いたわけだが当たりだったのかよ。


赤くなって慌てる姿に思わず「おもしれェ」と呟いたら聞こえていたらしく、刀に奴の手が伸びかかったのを察知して即座に平謝りした。

なるほど宇髄はこんな気分で俺の事を揶揄って遊んでいたのか。次会ったらシメよう。

それはさておき、伊黒に弁解する。



「お前を揶揄いたかった訳じゃねェ、本当だァ！

見てわかるだろうが俺は今悩み事があってなァ…自分でも自分の気持ちがよく分からねェっつうか、どうすれば良いか困ってるっつうか…

だからお前の話を聞けば何か参考になるかと思ったんだよォ」


「………」



俺だってこんな悩んでる情けねェ姿を友人の前で晒したかねぇけど、仕方ない。

しばらく黙っていた伊黒は、眉間を抑え天を仰いだ。



「よりによってお前と、よりによって恋話をすることになるとは思わなんだ。俺は今この現実に目眩と嘔気が止まらん」


「そんなにかよォ」



仕方ないので、伊黒が落ち着くのを待ってから切り出した。



「いつか甘露寺に好いていると伝えるのかァ？」


「やっぱり貴様とこんな話はしたくないな…
まぁいい。

いや、伝えるつもりはない」



文句を言いながらもキッパリとしたその答えに驚く。

その言葉の続きは、いくら待っても伊黒の口からは出てこなかった。

なんとなく、その理由はわかった。
甘露寺の隣にいることが憚られるような何かがあるんだろう。

俺に、母親を殺した罪があるように。




「…そうかァ。変なこと聞いて悪かったなァ」



俺だって、アイツの傍にいられない。
こんな血生臭くて汚れきった俺が、何を夢見てんだ。



しかし俺の様子を見ていた伊黒は静かに告げた。



「…俺のことは参考にするな」


「…なんで」


「今のは、俺の考えであり俺にとっての最善だ。お前にとっての最善が、俺と同じ行動とは思わない。」



それは完全に、俺の考えを見抜いての言葉だった。



「…ありがとよォ」



やっぱお前、良い奴だよなァ。

伊黒はフン、と小さく鼻で笑った。

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