第60話 ページ13
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まずい、って思った時にはもう引き返せない事態になっていた。
不死川は俯いていて表情が読めない。
深く溜息をついたのは音でわかった。
ふと、そういえばこの男は隊士達に最も恐れられている風柱という存在であることを思い出す。
流石にこれは怒鳴られる、と覚悟した。
「俺は…
俺は、お前が弱ェ奴だと思ったことはねェ。
お前は強ェよ。
だが、強くたって負けない、死なないとは限らねェ。どんなに強くなっても命の保証はねェ、そういう世界に俺もお前も生きてんだよ…!
だから俺は心配だって前から言ってんだろうが!!
本当はさっさと身を引いて欲しかった!だけどお前の信念にまで口出したくねェからやめろとは言わねぇようにしてたんだよ!それにはお前だって気づいてたんじゃねェのかよ!!!
それなのに今更放っておけ、関わるなたァ随分勝手なことを言いやがるなァ…!
んな事できる訳ねェだろうがァ!!!」
彼の怒号に、周りの空気がビリビリと振動した。
口調も段々悪くなっていき、通常運転の風柱に戻ってきている。
さすが風柱、と言わんばかりの気迫。
ここまで激しいものではないが、霧柱の姿の時に怒鳴られたことは数度あったし、他の隊士が犠牲になっているのを見た事もあったのでなんとか平静を保つことができたが、
私が普通の町娘だったら確実に泣いていた。
それくらいに怖い。
でも、そう言う彼の顔には、隠しきれない悲しさが滲んでいた。
それを見て、気づいてしまった。
不死川は怒ってるんじゃない。
私に突き放されたことに傷付いたんだ。
私はこの人を傷つけてしまったんだ。
気付くのが遅すぎた。
『っ、ごめ…』
咄嗟に謝ろうとした時には、不死川はもうこちらを向いていなかった。
「…気ィつけて帰れ」
それだけ言って、さっさと闇の中に消えてしまった。
最後の一言まで、私のことを心配していた。
『………』
助けられてもお礼も言えず、弱い自分に対する苛立ちで八つ当たりをし、
そして彼を傷つけたことにも気づけず、謝罪さえろくに言えなかった
そんな自分と、
助けたのに放っておけ構うなと突き放され、傷ついても最後まで私の身を案じてくれた不死川。
考えれば考えるほど、自分自身が情けなくて、
不死川の優しさが今回ばかりは刺すように痛くて。
『ごめん、なさい…っ』
涙と共に絞り出した小さな謝罪は、もちろん不死川には届かなかった。
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れみ(プロフ) - 華花。さん» 華花。様はじめまして!コメントありがとうございます!とても嬉しいです…!続編でも頑張りますのでこれからも呼んでいただけると嬉しいです!! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - Royal×Edenさん» いつも感想ありがとうございます!続編でもまた会えるのを楽しみにしてますね! (2021年11月3日 15時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
華花。(プロフ) - はじめまして、コメント失礼します。れみ様の書かれる言葉の一つ一つが物凄く好きです!お忙しいとは思いますが、体調にお気をつけて更新頑張ってくださいね。続編も楽しみにしております! (2021年11月2日 21時) (レス) @page49 id: 2bd2296ed7 (このIDを非表示/違反報告)
れみ(プロフ) - 柚葉さん» ありがとうございます!実弥たくさん出せるように頑張りますね!!また続編でお会いしましょう〜! (2021年11月2日 0時) (レス) id: c2e31f4a0e (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - れみさん» れみさんこんばんはRoyal×Edenです!!夜中までお仕事お疲れ様です。最近は余り仕事の続きやらワクチン接種で感想が遅れて大変御迷惑をかけてしまいました(´д`|||)いよいよ第三章に入りますが一体ヒロインはどうなるのか気になってきます(^w^)♪ (2021年11月1日 19時) (レス) @page49 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:れみ | 作成日時:2021年4月21日 19時