【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

朝定番のシチュエーション ページ35

「おはようのちゅー」

「……は？」

「それで手を打とうじゃねェか」


と。ひょっこり布団から顔だけを出して彼は平然とそんなことを言い出した。私はまさかまたそんなことを言われるとはまったく考えていないのでもう一度「は？」と無意識のうちに呟いていた。考えていなかったというよりは、彼が次に何を言い出すのかを考えてみたってそれが当たるなんてことはそうそうないので考えるだけ無駄なのである。考えることは疲れるし、ただでさえ彼の言動により私はいつだっててんやわんやで目を回してばかりなので、無駄なことだと分かっていることをやろうだなんて思えないのである。今回のこれも、きっと彼の言葉を予測しようとしてみても予想だにしなかった事態だっただろう。

思考がフリーズし、ゆっくりとした速度でまた回り始め、彼が言った言葉を噛み砕いて理解に至るまでのしばしの時間、私達二人の間には沈黙が降り注いだ。そして、「はぁぁぁ！？」という私の声が漸く部屋に響いた。


「おは……な、またそんな訳の分からないことを…！！」

「分かんなくねェだろィ。朝定番のシチュエーションだろーが」

「いや……だから…その、か、会議が！会議があるんですからそんなこと言ってる場合じゃなくて…」

「してくんないなら知ーらね」

「あっ、ちょっと…」


沖田隊長は再び掛け布団の中に顔を隠してしまって、私は情けなく片手を伸ばしたままそんな彼を見据えては溜め息をついた。もう本日何回目かの溜め息だ。たまには溜め息なんか出ないような平和で穏やかな一日を過ごしてみたいものである。

……とはいえ、どうしたものだろう。

彼の言ったことに従うか、無理矢理にでも布団を剥がすか、最悪副長にSOSを出すか。考えるとしたらその三択だ。布団を剥がすのはまぁ不可能ではないけれど、その後のことが怖い。沖田隊長がやられっぱなしで終わるなんて、そんなことは有り得ない。勝ち逃げさせてくれるほど優しくはない。力ずくで彼を起こしたその後のことを思うと恐ろしくて身震いしてしまう。これは却下だ。

そして副長にSOSを出す。これは私にとっては、言ってしまえば最も楽な方法だ。彼を起こすということを命じられたのにも関わらずそれをしっかり遂行できないのは少し気が引けるけれど、元はと言えば沖田隊長がちゃんと起床して会議にも間に合うように行動してさえくれればそれでいいだけの話で、私が悪いわけではない。少しの罪悪感を飲み込めば、効果的だしいい案のように思える。が、ひとつ問題がある。

この案を採用した場合、結構な確率で副長が飛ぶことになる。

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