帰ってきたんだな 沖田side ページ31
目を見開かせた俺の視線の先には、現在見回りに出ている隊士以外の全員が居るのではないかと思えるほど集まった真選組の隊士達が立っていた。狭い玄関にギュウギュウ詰めになって、そこに居た。
「お前ら……」
予想だにしなかったこの展開にほとんど呆然としながら俺は呟くと、Aが「ふふ」と笑った。とても楽しそうにしながら。
「ビックリしただろ総悟」
「近藤さん」
なんだか得意気な顔をして近藤さんが俺の前に立って肩にポン、と手を置いた。その少し後ろには土方さんの姿もあった。
「Aが昨日なァ、お前がビックリするような出迎え方をしたらどうだろうって提案してきたんだよ」
「Aが?」
「お前にそういう面をしてやろうってな」
と。土方の野郎が俺の顔を指差して憎たらしい、殺意しか湧かない表情でそう言うから、俺はどうやら随分と間抜けた面を晒してしまっているらしいことに気付いた。なんとかそんな面を引っ込めようと努力しながらAの方を向いてみると、「えへへ、皆さんに時間を割いて頂きました」と微笑んでいる。成る程、言い出しっぺが一番楽しそうにしているというわけか。そして俺はまんまとコイツとコイツらの思い通りの面をしてしまったというわけか。よし、忘れた頃に仕返しをしてやろうと俺は決める。
「ね?だから言ったでしょう?」
「あ?」
Aが俺の顔を覗き込みながらに口にする。してやったり面をしながら。
「皆さんが沖田隊長の帰りを待ってるって」
「……出迎えドッキリをするために?」
「それもあります」
なんとなく悔しい気もするけれど。ざまぁ見やがれみたいな顔をしている土方には腹立たしさを感じるけれど。だが、その笑顔を見ていると、別になんでもいいかという気がしてくる。俺の帰りを待っていてくれて、『おかえり』と言ってくれる奴等が居る。
『総ちゃんには、沢山の仲間が出来た。近藤さんや十四郎さん、道場に通っていたときよりもずっと、貴方の周りには暖かい人達で溢れていた』
『それから、もう一人。総ちゃんにとって、誰よりも何よりも大切な人』
そんな奴等が、確かに居る。それはとても幸福なことで、そんな奴等の居る場所が、俺の居場所で。
あァ、帰ってきたんだな、と。そう思った。
「……そーだな」
負けた感じがする、というか。少し癪だけれど。俺はつい笑ってしまいながらに、呟くように言ってやった。
「……ただいま」
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もち(プロフ) - 感動して1人で泣いてました😭😭とても引き込まれて気づいたら最後まで読んでました!!完結まで長かったですが素敵な小説書いてくれてありがとうございました!お疲れ様でした!😊😊 (2022年4月4日 14時) (レス) id: f64c573671 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - astrumlunaさん» astrumlunaさん!ありがとうございます!!最後まで読んでくださり嬉しいです!!私もこのお話の沖田隊長と夢主ちゃんはとても愛しいです(o^−^o) これからも二人は幸せになっていくんだと思います…!!素敵なコメントありがとうございました!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
astrumluna - この作品を見つけてから、一瞬で読み終わってしまいました!! 凄く引き込まれるお話で、沖田さんも夢主ちゃんも大好きです笑 最終話の“さぁ、今日も〜”という部分でこれからも幸せな日々が続いていく感じがしてとても好きです!! もっともっと2人の物語を読みたいです!! (2020年4月16日 12時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 憐さん» 憐さん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまってすみません…!一日で…!!長いのにありがとうございますぅぅ!!日下部さんは読者様から人気でとても嬉しく思います!(o^−^o) きゅんきゅんを目指したので沢山きゅんきゅんして頂けたなら大成功です! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - yukakdonaldさん» yukakdonaldさん!ありがとうございます!お返事が遅れてしまい申し訳ありません!!番外編!久し振りに日下部さんを書きたいです…!!どんな風にしようかそろそろ考えてみようと思います!!最後まで読んでくださりありがとうございました!! (2020年2月19日 16時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2019年4月5日 21時