【銀魂】沖田隊長、おはようございます【沖田総悟】

とても嬉しいです ページ26

「めっちゃキレられたな」

「ですね、ていうか、私達がこんな状態にあることにまったく触れませんでしたね」

「気にしてねーんだろ」


お互いに笑ってしまいながら、そんなやり取りをした。彼がおかしそうに笑っていて、私もなんだかおかしくて笑ってしまう。私が彼の上に被さるように乗っかっているのを看護師さんに見られてしまったのにも関わらず、それが気にならないくらいには、この時間が楽しくて仕方がなかった。もしかしたら後で今のことを恥ずかしく思って、うわぁぁぁってうずくまることになるのかもしれないけれど、その時はその時だ。そうなったときの私に任せておけばいい。今の私は彼と二人で、ただただ素直に笑い声を上げていればいいのだと思う。この幸せだと思える瞬間を、噛み締めていればいいのだと思う。

彼がずっと眠り続けていたとき。私は不安で怖くて、その先の未来にこんなにも幸せな時間があるのだと想像もしていなかった。失われてしまったのではないかとばかり考えて、この未来を信じられていなかった。けれどそれは確かに、今ここにあって。それが奇跡みたいに思えて。そう思うと、更に私は幸せだった。

それを存分に顔に出してしまっていたせいか、沖田隊長は「随分いい顔してんな」と。


「そりゃそうですよ。もう、私なんだか胸がいっぱいです」

「幸せで？」

「はい」

「俺が好きで？」

「はい」

「抱いていい？」

「ダメです」

「そこは『はい』って言えよ」

「そんなのに引っ掛かりませんよ私は」


彼との時間が幸せで。彼のことが大好きで。多分私は後で本当に恥ずかしさが時間差でやって来て悶えることになるのだろう。でも、彼の言葉に頷いて、自分の言葉で、彼に伝えたいと思えるのだ。


「貴方とこうして居られることが、とても嬉しいです」


私がそう言うと、沖田隊長は一瞬面食らったような顔をして。それからまた、小さく笑って。


「……俺も」


と。そう言った。

す、と。彼は私の頬に手を当てて、親指を滑らせて、なんだか物欲しそうな顔をした。その表情が可愛らしくて、ついクスリとしてから、私は彼に身を委ねることにした。

私と彼のおでこがコツン、と合わさって。彼の揺れる赤い目が私を見つめて。私の目も、もう沖田隊長しか見えていなくて。暫くの間見つめ合ってから、そっと彼が目を閉じて。一瞬遅れて私も目を閉じると、唇に柔らかなそれが重なった。

一旦離して、またくっつけて。


暫くの間。病室の扉がノックされるまでの数分間、私達はふわふわと甘ったるい時間を過ごした。

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