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『……なにしとるんですか、あんた』
蹲っている人間の小さな男の子に声を掛ければ、過剰に吃驚されてしまって飛び退かれる。
見た目は人間ならば七歳くらいであろうか。金色と思われる髪は薄汚れて、緋色の瞳に光はない。綺麗な服を纏っているわけでもなく、いうなれば、奴 隷と言うのが近しいような。散々虐げられてきたのかその小さな身体全身で俺を威嚇するようにしている。
『ふは、取って食ったりしませんよ。……今追われてんのは俺やしな』

「……むらさきの、まじょ……」

『それ、俺のことっすか?』
「……違うん、か?おまえ、この森に住んでる魔女やろ……」
『うーん、そっすねえ』
ぎろ、と睨まれる。めんどくさいな……。
『で、あんたは何しにきたんすか。俺のこと殺しにきたとか?』
「……」
『言ってくれへんとなんもできませんよ。』

沈黙が流れる。はあ、と何度目かも分からないため息をつくと、びくりと彼の方が跳ねる。ああこんなことでも怖がらせてしまうのか、と少しガッカリする。と、不意に彼が口を開いた。
「……俺、捨てられたんや」
『………へぇ?』
「紫の魔女に、殺されてしまえって。そしたら、魔女は俺を殺した事実があるから人間にとって責める口実ができる、って。」
なんて浅はかな。これだから人間は……と、思ったがそれは口にしないでおく。それにしても捨てられたとはなんとも酷いことをするものだ。魔女が悪?どの口が言っているんだ全く。とりあえず、この男の子をどうにかするべきだ。殺すという選択肢はそもそもなかったし、しかし捨てられたとなると人間の元へ帰すのも酷と言ったところ。それならば、
『……俺と一緒に住みます?』

「……は?」
状況を見て考えれば割と普通の考えではあるはずだが、どうやらひどく驚かせたらしい。素っ頓狂な声を上げてその目が見開かれた。
「お前、それ本気で……俺が、嘘ついてるとか、疑わへんのか?」
『疑うも何も、別にあんたが俺を殺しに一人で来てたとしても、俺は国家を敵に回した魔女っすよ』
『そんな、あんたみたいな弱そうな少年一人に殺されたりしませんよ』
「……へんなやつだな」
『そうでもなけりゃこんな状況で生きてないっす』
「っは、そうか……」
くすり、と彼が笑った。子どものことはよく知らない、どこで、なにで笑うかも泣くかも怒るかも分からない。
けれど今は、笑うことを諦めたような顔をしていた彼を笑わせられたことを少し嬉しく思う。


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作者名:藤納戸 | 作成日時:2024年11月3日 10時

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