Epilogue. -青、藍- ページ33
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(香坂)
少し、昔話をしようか。
あれは、一緒に働くフェロー達と初めて顔を合わせた日の出来事。
────全員、苗字に色がある…。
藍沢耕作の藍色。
白石恵の白色。
緋山美帆子の緋色。
藤川一男の藤色。
ちなみにね、私もあるんだよ。
香坂Aの
少し灰色がかかった、明るい黄色。
その昔、平安時代に貴族の染物に使われていた高価な色らしい。
でもとってもマイナーな色だから、知ってる人なんてほんのひと握りくらいなんだけどね。
これが私の初日に気づいたこと。
少し面白いでしょう?
それを耕作に話せば、確かにそうだなと言って彼も笑ってくれた。
そうこうしているうちに、私達の周りには皆が集まってくれる。
この仲間を、大切にしたいと強く思って、もう何年経っただろうか。
つらくなったら、手をのばせばいい。
その手を、私は掴んで離さないから。
────貴方がくれたぬくもりを、今度は私が分け与えよう。
ひとりは寂しい。
ひとりは怖い。
人間、誰かしらどこかに、心に、闇を抱えている。
けれどそれがなければ、人間は成長できないと、私は思っている。
この先にある確かな未来を信じて、今日もドクターヘリは、澄み渡った青き空の中を、飛んでいく。
────成長に落胆はつきものだ。
けれどもう、落胆が成長に繋がる時期は、遥か遠い過去に置いてきてしまった。
ねぇお父さん、こんなときは、どうすればいいのかな。
眠りの淵から掬い上げられるようにして浮上した意識が、そばに誰かいることを伝えてくる。
「………A」
「…、帰る?」
頷いた耕作に、そっかと返して、私もまとめてあった荷物を持ち上げようと起き上がる。
もう少ししたら、担当の先生が帰ってもいいと言いに来てくれるだろう。
服は入院着から私服に着替えてあるので、そのまま帰っても何ら問題はない。
「…A」
「どうしたの、そんな顔して」
まるで、捨てられた子犬のような、瞳が不安で揺れた顔をして。
向き合おうとベッドから降りた瞬間、のびてきた腕に引き寄せられた。
「耕、作…?」
彼は何も言うことなく、腕に力をこめてくる。
その背をよしよしとさすりながら、小さく、それでも届くように、言葉を紡いだ。
「……────ありがとう、ごめんね」
第6話 落胆の向こう側 -Fin-
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yui - いつも楽しく読ませていただいております!単語についてなのですが、6話の5ページ、「コークリフト」とあ(ますが「フォークリフト」かと思われます。倉庫内で重いものや大きいものを移動させる乗り物です。 (2017年10月13日 16時) (レス) id: 30abdae40f (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - 18の守口さんの名前が森口さんになってましたので報告させていただきました (2017年10月7日 13時) (レス) id: 1a1e66043f (このIDを非表示/違反報告)
kii - 仕事の話し(患者さんとか)でもいいし、プライベートでもいいし、シリアスな感じでもいいし…とにかく香坂先生と白石先生が会話をしているところをもっと見たいです(笑)突然のお願いですみません!これからも頑張ってください!応援しています! (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
kii - 6話完結おめでとうございます!いつも楽しい作品を作ってくださりありがとうございます!またまたリクエストなのですが、最近藍沢先生との絡みが多いので(不満とかそういう意味じゃないです!)白石先生との2人のシーンが欲しいです!できれば藍沢先生の恋愛話は無しで… (2017年8月28日 23時) (レス) id: 827d9f9495 (このIDを非表示/違反報告)
nee - こんばんは!いつも作品見させてもらってます!リクエスト?意見?なのかわかりませんが名取先生には香坂先生から緋山先生に恋心移ってほしくないっていうか……無理なこと言ってすみません!これからも頑張ってください! (2017年8月28日 22時) (レス) id: 363a4b4fa6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月22日 0時