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そのとき、血圧低下を告げるアラームが初療室に響き渡る。
「血圧落ちてます…！」
「IVR室、至急連絡して」
「レボーン使おう」
橘先生を筆頭に藍沢先生から指示が飛び交う。
「灰谷先生、FFP、RBCもう10単位オーダーして」
「わかりました」
私は白石先生の指示を耳に入れつつバイタルに注意しながら、輸血のための生食を準備していく。
藤川先生の持つドリルの音が、やけに大きく聞こえた。
一旦その場から離れた私の後ろを、誰かが通り過ぎる────驚いて外に目を向ければ、名取先生が足早に立ち去るところで────、え？
「…えっ？」
それは白石先生も同じようで、目を丸くしている。
呼び止めようかと足を動かしかけたとき、硬い声が私を制した。
「────ほっとけ」
藍沢先生だ。
「……、う、ん…」
────…名取先生、駄目だよ。
目の前の現実がどんなに厳しいものでも。
それから目を背けるのは、だめだよ────。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(緋山)
冴島の病室を後にして、スタッフステーションに戻ると、頬杖をついた手で自分の頬をつつきながら、浮かない顔をしているAがいた。
その横にそっと腰かけると、気がついていなかったのだろう、はっと顔を上げて、微笑する。
「……おかえり」
「…ただいま」
お疲れ様と言わないのは、彼女の気づかいだ。
「こっちもバタバタだったよ」
「あんたと藍沢がいる限り大丈夫でしょ」
「…そんなこと、ないよ」
その声が、妙に弱々しくて、らしくなくて。
そのとき、向かいに誰かが腰かけた────白石だ。
「……冴島さんは？」
ぴくり、と隣の小さな肩が震えたのが分かった。
「…うん。
……身体は大丈夫」
「…そう」
Aは何も言わない。
ただ虚空を見つめながら、微動だにしない。
その表情は、もろく儚さを帯びたように見える。
顔を上げたら白石とばっちり目が合って、お互い気まずくなってキーボードに指を滑らせる。
────なんかこの子が何も喋らないと、別人かって思うよね。
ちらりと隣を見れば、先程までの表情なんて嘘のように、ばちばちと一心不乱にキーボードを叩いていた。
────溜め込むのは変わってない、か…。
しばらくしてフェロー三人が戻ってきて、Aはただ名取先生を何とも言えない表情で見つめていた。
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (
レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です！ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！表現が私の好きな表現で一気読みでした！映画も書かれますか？楽しみに待ってます！ (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´｡ｐωｑ｡｀) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月15日 0時
