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(香坂)
ヘリは、あっという間に戻ってきた。
「二次病院から転移搬送されたって？」
「橘先生…」
白衣に身を包んだ橘先生に小さく会釈をしながら、私も処置に加わる。
「倉田正敏さん、57歳。
血圧触診で65、脈拍126です」
「ショックの原因は」
思わず喉に言葉が引っかかる。
そのあとを、白石先生が繋いでくれた。
「…骨盤骨折です」
「それでなんで二次病院に運んだんだ？」
橘先生が最初に診断をしたのは誰だと聞く中、皆が口をつぐんでしまうが、これは言うしかない。
私が口を開こうとしたとき────。
「名取です」
藍沢先生が橘先生にタブレットを渡しながら報告する。
自分の名前を呼ばれた名取先生は、どこか怯えたような顔で藍沢先生と橘先生を見た。
「これが分からないってことあるか」
そう言いながら橘先生は、名取先生にタブレットを差し出す。
「いや…」
「────見落としです」
────そんなに、言い切らなくても…。
私はわずかに眉を寄せながら藍沢先生を見て、骨盤の状態を確かめると、橘先生から声がかかる。
「香坂、お前でも厳しいか」
「…不安が残ります」
この状態なら、藤川先生が診たほうが正確だと思い、素直に思ったことを述べる。
「いや、無理にしろとは言わん。
…白石、藤川こっち来れるか？
いま大変そうだけど」
そう尋ねられた白石先生は、一瞬私と藍沢先生に視線をずらす。
彼はすぐに患者に向き直ってしまったけど、私達はお互いの気持ちが痛いほどわかった。
────しょうがない、こと…。
戻ってきた藤川先生に、私はなんと言葉をかけて良いのか分からなかった。
その表情を見て、悟ってしまったから。
「────、っ」
助け、られなかったんだ。
いま頃冴島さんは病室にいるのだろうか。
押しつぶされそうな悲しみを抱えて。
「ドリルくれる？」
「はい」
パソコン画面の骨盤を見ながら指示を出していく藤川先生は、いつもと変わらない。
「あー、これなら、現場で気づかないこともあるかもな」
彼は名取先生にそう言ってひとつ頷くと、処置に取りかかった。
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (
レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です！ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました！表現が私の好きな表現で一気読みでした！映画も書かれますか？楽しみに待ってます！ (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´｡ｐωｑ｡｀) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月15日 0時
