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(白石)
冴島さんの病室のドアは開けられていて、そこに小柄な女性がもたれかかって中の様子を聞いている。
Aだ。
そっとその肩に手を置いて、驚いた彼女の背を押しながら中へ入る。
────もう、変なところで気を使うんだから。
あー、でもこの空気は確かに、この子の足が止まるのも分かる気がする。
私は悩んだ結果、仕切られているカーテンを思いっきり開いた。
「うぉっ!?」
「あ、なんだ、ここにいたの」
「め、恵ちゃん…」
後ろにいた彼女ですら、ぽかんと呆けている。
冷静なのは冴島さんだけだ。
「なに、どーしたの二人して。
なんかあった?」
緋山先生の言葉に、あっそういえば言い訳考えてなかったと咄嗟にAを見るが、黙って瞬きを繰り返される。
「あ…えっ、あのー…」
「恵ちゃんがね、聞きたいことがあったんだって」
ナイス助け舟!でもその理由考えるの私だよ…!
「なによこんなとこまで来て」
「あの、あれよ…あ、名取先生。
あれ、落ち込んでるの、落ち込んでないの?」
私がそんな話題を切り出しながら、ベッドのそばにあった椅子に腰掛ける。
Aを緋山先生が手招きして、テレビ台のそばにあった、もうひとつの椅子に座らせた。
「え?
あれは最初からヘコんでたよ」
「そうなの?
えっ最初っから?」
「うん。
ねぇA?」
「…まぁ、自分の思ったとおりの結果じゃなくて悩んでるっていうのも少しあるとは…思うかな?」
はー…さすが藍沢先生に負けず劣らずの洞察力。
「…なんか、あったの?」
それを黙って聞いていた冴島さんが、私に聞いてくる。
黙って緋山先生とAと視線を交錯させる。
どう、しようか。
「あっ、あのー、あの、あのね?」
「…ぷっ」
ちょっA、そこ笑うとこじゃない!
緋山先生は冴島さんのベッドの端に腰掛けながら、手振りに説明する。
「フェローが現場で、骨盤骨折見落としたのね。
それを、言い訳ばっかりしてるからさ、白石がキレちゃって」
「え?」
「カンカンだったんだよ、恵ちゃん」
めずらしい…と私を見てくる冴島さんに、うつむき加減に小さく答える。
「…キレました」
「白石ってさ、意外と人の気持ち分かんないんだよね」
「うるさいな。
てか!それはAの得意分野でしょ?
私が分かんなくても大丈夫」
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萌香(プロフ) - 5の17ページの一番上です。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
萌香(プロフ) - 文字が間違っていると思います。 (2019年1月14日 1時) (レス) id: 72c059cc1e (このIDを非表示/違反報告)
珠緒(プロフ) - 最近この作品を見つけ読んでみると、想像以上に私のドストライクな作品でした(^^)最高です!ありがとうございます。続編も読んでいきたいと思います。他の方も書かれているように、映画も書いて欲しいですね〜。ステキな作品ありがとうございます。ずっと応援してます♪ (2018年8月9日 3時) (レス) id: 762a6c7fed (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - 久しぶりに読み返しました!表現が私の好きな表現で一気読みでした!映画も書かれますか?楽しみに待ってます! (2018年6月16日 9時) (レス) id: f2d0e5e7c8 (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - ちぃさん» キュンキュンして頂けてとても嬉しいです〜ありがとうございます(´。pωq。`) (2017年8月22日 9時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月15日 0時