14 ページ17
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(香坂)
ICUに駆け込んだ私の耳が拾ったのは、けたたましく鳴り響く心停止を告げるモニター音。
ベッドに力なく横たわる、朝まで元気だった暁人くんの姿────。
「状況は」
「DC(カウンターショック)した。
胸が苦しいって言ったあと急にVFになった」
橘先生が尋ねる。
三井先生がついていてくれて、よかった…。
「A」
「うん。
挿管準備おねがい」
緋山先生の言葉に素早く指示を出したとき、暁人くんの止まっていた心臓が動き出した。
「────戻った」
「16時42分、心拍再開です」
看護師の言葉を耳に入れつつ、緋山先生が挿管に取りかかる。
私は橘先生と心電図のグラフを見ていた。
「先生…」
「あぁ、取り返しがつかなくなる前に、エコーも入れよう。
オペ室移すぞ!」
「はい!」
心筋全体の動きが弱く、心拍が再開したからと言って気が抜けない状態だった。
「循環器内科の井上を呼んでくれ!
まだいるはずだ」
「わかりました」
ベッドが出る直前、隣で小さく、優輔くんが彼の名前を呼んだ。
「……あきと」
と。
その呼びかけを拾った私は、その頭を1度だけするりと撫でて、オペ室へ向かった。
そのときの私は、泣きそうな顔をしていたと思う。
鼻の奥がつんと痛んで、きゅっと胸の奥が苦しくなる。
────泣くな。
全部やり切れるだけやり切れ。
────おねがい、たすけて。
頭のどこかで、優輔くんの声と11年前のあのときの私の声が、重なって聞こえたような気がした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(藍沢)
「────佐倉暁人くん11歳男児、拡張型心筋症による心不全に、心筋梗塞を合併してる」
「内出血がひどいし出血が止まらない…」
俺や冴島がオペ室に入ったときには、暁人くんの顔はすでに暗い影が差していた。
「井上、抗凝固剤はどうする。
香坂の言うとおり、これ以上血が止まらん」
「とりあえず切って構わない。
FFPもどんどん入れてくれ。
生きてなきゃ血栓もクソもない」
「────ACT測定します」
追い込まれていく中で、ただひたすらに手を動かす。
それが正しいと、最後まで信じて疑わないから。
3694人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Koto(プロフ) - リクエストなんですが、shortstoryで三井先生が香坂先生を溺愛するお話が見てみたいです! (2017年9月23日 11時) (レス) id: e1c8bdc482 (このIDを非表示/違反報告)
うみ - 藍沢とくっつけてほしいです! (2017年9月1日 5時) (レス) id: 4dd38bd3ac (このIDを非表示/違反報告)
ayanel(プロフ) - あおいさん» コメントありがとうございます。リクエスト了解しました、短編で書かせていただきますね(*^_^*) (2017年8月24日 13時) (レス) id: 61d33ebdb1 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - ずっと楽しく読ませてもらってます!伏線の張り方とか心情描写まで丁寧で引き込まれます。しかもネタもつきないしすごいですね!!リクエストなんですが、京先生が大阪の病院でモテて、白石先生がそれにちょっと嫉妬する?みたいなものが見たいです! (2017年8月23日 23時) (レス) id: c0afa0c28c (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - 前作時にはコメ返ありがとうございました!4話読みました。歩那ちゃんの存在が気になります。香坂先生にとって良い刺激といいますか、そうなってくれるのが楽しみです!又短編立浪草のお話も読みました。一週間でも幸せだったのだろうと思うと凄く切なくて泣けました。 (2017年8月15日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月8日 10時