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(香坂)

久しぶりに包まれた浮遊感に、私の心臓は早く現場に連れて行って、といつもより速い脈を刻んでいた。



「240km/hは伊達じゃないねぇ」

「いまの香坂先生、とてもいい顔してますよ」

「へへ、そう?」



なんて会話を冴島さんとしているうちに、森林公園の芝生が見えてくる。



「よっ、と」

「こちらです」



無事に着陸して外に飛び出すと、私は救急隊員の後を追って駆け出した。



「森林公園の警備の方が、巡回中に発見したそうです。

免許証のお名前は、秋本二郎さんです」

「わかりました、ありがとうございます」



私はそのままの勢いで救急車に乗り、患者の秋本さんの肩を叩いた。



「秋本さん、わかりますか。

手握れますか?」



するりと差し込んだ手を、微かに握る感覚があった。



次いで、すばやく瞳孔を確認する。



「Af(心房細動)があるね…脳梗塞かも」

『────わかった。

脳神経外科にも連絡入れとく』



ヘッドフォンから聞こえた藍沢先生の声にドキリとしつつ、返事を返す。



「…おねがい」



患者の容態に気を配りつつ、ちらと横を見れば、なんとまぁ灰谷くんが青白い顔をして座っているではないか。



ドクターヘリ、人生2度目のゲボる?



「…袋いる?」

「あ、ち、違います、大丈夫です…」

「うっ…」



秋本さんが微かに呻いた。



あ、ゲボるのはこちらか。



「嘔吐するかも、てかする!」



患者の身体を固定するベルトを外して酸素マスクも外して横向きにすると、予想通り嘔吐する。



吐瀉物が冴島さんの靴や足元、フライトナースのツナギに、それから私の手袋に包まれた手やユニフォームにも少しかかって、袋取っとくんだったなぁと後悔しつつ、指示を出す。



「誤飲するとまずいから、挿管しよう。

すみません、ベルト外しますね」

「はい」



ヘリの中でベルトを外すのはまぁ危険なので、一応断りを入れて腰を浮かせる。



「────カフ固定おねがい」

「……はい」



しかしいつまで経っても冴島さんが動く気配がないので、どうしたものかと顔を上げた私は、見た。



彼女の上体が、ゆっくりと秋本さんの上に倒れていくのを。



「な…っ、冴島さん!?

しっかりして、どうしたの!」



低い呻き声に隣を見れば、灰谷くんも口元を手で抑えている。



そしてそれは次の瞬間、私にも牙を剥いた。

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作品ジャンル:恋愛
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時

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