short story.-思い、思われ。- ページ44
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(藍沢)
救命に俺とAが戻り、はや2日。
そして彼女が翔北に戻ってから、1週間が経過した。
医局での休憩中、皆が思い思いの作業をする中、俺の右斜め向かい────白石の隣は、今日も空席だ。
「たっだいまー…あれ、あの子今日もいないの?」
「うん、今日は心外でオペ」
「なに、1日1回は他の科に引き抜かれてない?
良いように使ってんの腹立つんですけど」
緋山と白石の会話に、コーヒーを啜りながら心の中で大きく同意する。
いくら人手が足りないからと言って、あいつに仕事をこれ以上押しつけないでやって欲しい。
休憩さえまともに取れない彼女は、昼食のときにはけろりとした顔で「今日の日替わり何かなぁ」とか言いながら戻ってくるもんだから、何も言えない。
「ま、若いやつらの目的はオペだけじゃないだろうけどな」
「何それ、どういうことよ?」
ラーメンをずずっと啜りながら藤川がこぼした言葉に、ぴくりと眉が上がるのがわかった。
「だって考えてみろよ?
技術優秀、愛想抜群、眉目秀麗、そんな完璧人間香坂A先生を間近で見る機会なんて早々ないだろ」
「それは言えてるかも。
本人もなんかパンダになった気分って言ってた」
白石がくすくすと笑う────が、俺の頭はそれどころじゃなかった。
────言い寄られて、ないだろうな…。
「………そのオペ、どこでやってる?」
「あーっと…確か中央手術室」
白石の答えにタブレットを置いて、俺は足早に医局を出た。
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(白石)
「……怒ってたね」
「だな」
「害虫駆除はあいつの役目だもん、それでAが戻ってくるならいいじゃない」
確かに心臓血管外科などの手先の器用さが求められるオペでは、彼女の存在は大きいだろうけど。
ふっと頭に浮かぶのは、七夕の夜に彦星がごとく去っていった彼の顔。
────…元気かな。
Aが好きなコーヒーでも淹れといてあげようかな、と席を立ち上がる。
藍沢先生、天然子猫の捕獲、よろしくお願いします。
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続きます。
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あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか? (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか? (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか?意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ayanel | 作成日時:2017年8月1日 0時