32 ページ34
あれから耕作と分かれて、私は仮眠室に戻っていた。
テーブルの上に乗ったシュークリーム。
その包装に付箋が貼られている。
ゆっくり休んでね。
今回も助かりました、ありがとう❀
恵ちゃんのきれいな字だった。
帰ってゆっくり頂こう。
腕時計は、5時半を指している。
待ち合わせまであと1時間、ゆっくり支度をして向かえそうだ。
まとめていた髪をほどき、手櫛を通す。
1度家に帰ってシャワーを浴びて服を着替える時間は十分にあった。
一旦帰るか。
そうと決まれば手早く荷物をまとめ、もう中身の少ないドラッグケースもミネラルウォーターも鞄に突っ込んで、私は服を着替えて仮眠室を出た。
途中、スタッフステーションで恵ちゃんを見かけたので、笑顔で手を挙げる。
「恵ちゃん、シュークリームありがと！」
「こちらこそ、今回もありがとう。
ゆっくり休んで」
「うん、お先に失礼します」
向かうのは駐車場の相棒の元だ。
ヘルメットを被ってエンジンをふかす。
ほどよい重低音が内臓を震わせてくる。
────あぁ、やっぱりお前はいいね。
翔北から借りているホテルまではバイクですぐだ。
そろそろマンションでも見つけないとなぁ、これじゃ人呼べない。
などと思いながらベッドの上に上着と鞄を放り投げ、タオルを引っ掴んでシャワールームに入った。
シャンプーのいい香りが鼻腔をくすぐる。
ふと目にとまった、右手の手首にある古傷。
これは5年前、ＬＡで手術中にに新人の取り落としたメスが、私の手首を滑ったときにできたものだ。
手袋をしていたにも関わらず、位置が悪かったためかなりの出血だった。
幸い神経はやられていなかったため、こうして医者の命である手は無事なわけだ。
髪を乾かしながらぼんやり過去に浸って、クローゼットを開く。
その中からお気に入りのネイビーブルーのワンピースを取り出して身に纏う。
クラッチバッグに財布とハンカチとティッシュ、スマホとドラッグケースを入れて。
髪をハーフアップにして手早く化粧を施した。
履きなれた黒のパンプスを履き、施錠を済ませてから、私は目的の場所へと足を進めたのだった。
胸元で、ひとつになったピンクゴールドのリングが揺れている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3742人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやみん - 名取先生が、自分に、恋したなんて、最高です!!!!! (2019年8月19日 12時) (
レス) id: ac50c68a33 (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 16話、朝日は登りつつではなく朝日は昇りつつ、ではないでしょうか？ (2019年2月10日 15時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 14話、以外にも耕作だった。ではなく、意外にも耕作だった。ではないですか？ (2019年2月2日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 13話冒頭、横峯さんではなく横峯ではないですか？意図されてでしたらすいません (2019年1月18日 22時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
rabbit - 32の下から9行目「手術中にに」となっています。間違っていたらごめんなさい。 (2018年10月6日 23時) (レス) id: fec1ec90ab (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ayanel
| 作成日時：2017年8月1日 0時
