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(緋山)
「まだ誰もご家族が捕まらない？」
処置後、廊下を歩きながら、私は滝川さんのご家族のことについて三井先生と西条先生に報告をしていた。
隣に控えるようにして歩いている香坂先生が眺めているのは、違う患者のカルテ。
「はい…。
長男は出張中、三女は遠くて行けないって…。
次男なんて、死んだら知らせてくれなんて言うんですよ！
信じられない…！」
「…────実の親でしょうに」
その低い声に驚いて隣を見れば、香坂先生が眉をひそめてバインダーを握りしめていた。
その顔には、隠しきれない怒りがにじみ出ている。
西条先生が、ふぅと息をついた。
「まぁよくある話だけどねぇ…」
少し前を行く香坂先生が荒っぽくまとめていたお団子をほどけば、ポニーテールがひょんひょんと揺れ、苛立ちを表す馬の尻尾のように思えた。
「ほら、そんな怒らないの」
「…すみません」
ぽん、と三井先生に背を叩かれた彼女は、不満げながらも小さく謝罪の言葉を述べる。
「とにかく、オペは第1手術室な」
「あたし入っていいんですか!?」
「そのために電話回してたんでしょ？」
薄く笑いながら答えてくれた三井先生の言葉に、頬が緩んでいくのがわかった。
「ありがとうございます！
……やった…」
「おめでと」
「…うん、ありがと」
小さくガッツポーズをしたところに、香坂先生が笑いかけながら横を通り過ぎていく。
それは心から喜んでくれている裏表のない笑顔で、思わずどもってしまった自分が恥ずかしい。
「……滝川さん。
もし助かって目が覚めても…ひとりなんだね」
「…あぁ」
数歩先を歩いていた三井先生と西条先生のやりとりを聞いていた香坂先生が、はっと顔をあげてHCUに横たわった滝川さんを見、その視線がどんどん下へ落ちていく。
「ちょっとICUの様子、見てきます」
「…美樹ちゃんのところ、いってきます」
西条先生に続いて、各々目的の場所へと歩いていく中、香坂先生が思い出したように立ち止まった。
「あ、緋山先生。
これどうぞ」
ころんと手のひらに転がったのは、白い包み紙の丸い塊────チョコレート。
「え…いいの？」
「処置後には糖分補給大事だから」
じゃあ、お疲れさまと立ち去っていく後ろ姿が、あっという間に小さくなっていく。
ほんとうに、らしくなかった。
────あんな顔、するんだ。
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ほち(プロフ) - 続きとても気になります……！更新待ってます…！ (2月14日 9時) (
レス) id: 9d8af713d5 (このIDを非表示/違反報告)
レモン - 更新待ってます！頑張ってください！ (2020年1月18日 10時) (レス) id: 572aeb701d (このIDを非表示/違反報告)
うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になってます この作品はもう更新されないのでしょうか？ (2019年8月24日 21時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
音夢(プロフ) - 続きが…気になります！！ (2019年6月21日 2時) (レス) id: 11609052e1 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - シリーズとても面白くて、1日で読み終えてしまいました！この小説でのコードブルーがとても好きになりました！ちなみに、劇場版は書かれたりするんでしょうか？お忙しいと思いますが、作成されたら飛んで読みに来ます！頑張ってください！ (2018年8月1日 18時) (レス) id: 132fe7823f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2018年4月4日 15時
