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「いい？
この線路に沿って、向こうにまっすぐ歩くとね、辻が谷っていう駅につくの。
そこまで行くことができれば、必ず大人の人がいる」
翔くんの瞳が、不安そうに揺れた。
まるで、捨てられた子犬のようだ。
「そんな顔しないで、大丈夫よ。
分かれ道も何もない、まっすぐな道だから」
つい、と左手でそのまま道を指し示してやれば、翔くんはそちらに目を向けて、ぴしりと固まってしまう。
きっと彼の目に飛び込んできたのは、まだ流れ続ける鮮やかな鮮血の紅と、泥の黒。
動かなくなった何人もの人々が、線路の脇に倒れている。
「いやだ…！」
────うーん、こりゃしぶとい。
苦笑して促すように頬を撫でてみても、彼はいやいやと首を振るばかりで。
どうしたものかと、藤川先生に視線で助けを求めた。
いつまた崩落が起きるか分からないこの状況で、こんな小さな子どもをここに残らせるわけにはいかない。
ふと、私の頭にとあるひとつの考えが浮かんだ。
「…わかった。
じゃあこの先生と一緒なら行ける？」
「香坂…！」
抗議の声を上げてくる藤川先生に苦笑して見せれば、ふっとその勢いは弱まる。
「私は大丈夫だから。
…上に行けば皆がいる、シーバーが使えないいま、頼りになるのは藤川先生しかいない」
だからお願い、分かって？
そう言えば、彼は大きなため息を吐いて天を振り仰いだ。
「……藍沢の気持ちが、よおぉぉく、分かった」
「…ありがと、ごめん」
ふたたび翔くんに視線を戻せば、きゅっと唇を噛み締めて私を見つめていた。
まだ潤んでいる瞳に見つめられるうち、手は自然と動いていて、首をもたげてネックレスをフライトスーツの胸元から引き抜く。
ちりん、とピンクゴールドのリングと、いまでは飾りになってしまっているニトロペンダントがぶつかり合い、涼やかな音を立てた。
それを掴んだ左手で、翔くんの首にかけてやる。
「これ、翔くんにあげる。
私の大切なお守り、これさえあれば、絶対大丈夫だから」
ほのかにまだ温かいであろうそれを握り締めて、彼は凛々しく立ち上がった。
「…すぐに誰か行かせてもらえるよう頼む。
それまで────絶対死ぬんじゃねぇぞ」
「大げさ大げさ。
…翔くんをよろしくね」
だんだん小さくなっていく足音を耳にしながら、私はふたりの背中が闇に消えるまで、その姿を見送っていた。
静寂が、あたりを包み込む────。
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ふみ(プロフ) - 一言、凄く感動しました。作品に忠実でありながらオリジナルを綺麗に上手く組み込んでて違和感なく読む事ができました。お忙しいとは思いますがファースト・セカンドシーズン、スペシャルや映画の方の作品も期待してます、こっそり、堂々と！無理せず更新お待ってます！ (2018年8月15日 0時) (
レス) id: fa7ef13cd4 (このIDを非表示/違反報告)
あおい - あとうひとつ、ではなくてあともうひとつ、ではないですか？間違ってたらごめんなさい。28です (2018年8月7日 21時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
葉月 - はじめまして！全部読ませてもらいました。少しわからないところもありました…最後死んでしまったのは悲しかったですが感動でした！ (2018年7月29日 13時) (レス) id: 598db5caaa (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - こんばんは。お疲れ様でした。ひと作品ひと作品大好きです。途中から来れなくなり、昨日残りを一気に読みした。涙なしでは読めませんでした。ayanelさんの作品が本当に大好きです！終わってしまいましたが今後のseason1や番外編も楽しみです！更新頑張ってください。 (2017年11月21日 1時) (レス) id: 68a6b7d888 (このIDを非表示/違反報告)
Appppppppple - 最初から最後まで読み始めたら止まらなくて、すごく好きです！主人公の波乱展開や次々と起こっていく奇跡に思わず涙をこぼしながら読ませていただきました。耕作との恋愛もじれったいけど思いあってるのが伝わってきてとても素敵でした！これからも頑張って下さい！ (2017年10月23日 18時) (レス) id: d7af8c4e34 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年9月20日 0時
