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ドアを出たところで、ぱたぱたと軽い足音が追いかけてきていることに気がついて、ふっと身体ごと後ろを振り向いたときだった。
「わ……っ！」
突然俺が止まったことで急停止したAの小柄な身体が、勢いを殺しきれずに半ば衝突するような勢いで腕の中に飛び込んでくる。
バランスを崩しかけたその身体を抱きとめれば、久しく触れていなかったそのぬくもりに、心臓が締め付けられるような痛みと、その裏にある幸せを訴えてきた。
「ご、ごめんなさ…」
「────悪い。
しばらく、こうさせてくれ…」
え、と漏れた声もろとも後頭部を片手で自分の肩口に引き寄せて、そのやわらかな髪に頬をすり寄せた。
呼吸するたび、Aの香りが自分を包み込む。
数週間動いていなかったせいで一段と細くなったように思えた腰に腕を回せば、彼女の足が爪先立ちになった。
「え…あ、いざわ、先生？」
身じろぐ身体を、たくましい腕が拘束する。
手術用のスクラブ越しに触れるぬくもりは、その関係を失って初めて、こんなにも愛しいものだったのだと痛感する。
離したくない。
離したくても、もう離せない存在に、なってしまっていたから。
「────………耕作」
「…っ!?」
一瞬、幻聴かと思った。
がばりと身体を離した俺に驚いたのか、腕の中でAが瞬きを繰り返す。
「あ…えっと、緋山先生から聞いたんです。
私が、皆さんをどう呼んでいたのか」
いきなりすみません、と小さく頭を下げた彼女は、遠慮がちに問うてくる。
「…なんて呼んだら、いいんでしょうか」
────ここで素直に言ったら、お前はどんな顔をする？
先ほど抱き締めても抵抗しなかったのは、前の自分ならそうしたと、思ったからだろうか。
そう思うと、なんともいえない気持ちが噴き上がる。
口をついて出た言葉は、俺自身を傷つけた。
「…お前の好きにすればいい。
無理をしてまで、以前のように振る舞うな」
────俺は馬鹿か。
後悔が心の中を渦巻く中で、目の前の彼女は淡く微笑んだ。
ほんとうに、笑い方まで心をざわつかせる。
「────香坂」
「…はい」
あえて苗字で呼んだのは、この近すぎる距離から少しでも離れなければと思ったから。
「お前の手術が済んだら、伝えたかったことがある」
視線を絡ませて、そっと囁くのは。
────見開かれた瞳が、陽の光を反射してきらめく。
真珠のような涙が一筋、頬を滑り落ちた。
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リラン(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます！読むたびに次をもとめてしまう！今後も期待してます！話は変わりますが、少年陰陽師読んだことありますか？何となく文が似ている所があってずっと気になっていたんです。急に質問すみません。もし知らないのであれば申し訳ないのですが… (2019年2月12日 12時) (
レス) id: c050d878db (このIDを非表示/違反報告)
Blueheart - 18、大大抵ではなく、大抵では？ (2018年7月4日 20時) (レス) id: d757884bbd (このIDを非表示/違反報告)
鈴子 - コードブルー好きにはたまらないね\^-^/ (2017年10月14日 21時) (レス) id: bbbfeb8862 (このIDを非表示/違反報告)
咲(プロフ) - いつも更新楽しみにしています！更新される度に続きが気になって気になって！最終回、楽しみにしています！更新頑張ってください！ (2017年9月19日 23時) (レス) id: e98d2ab7a8 (このIDを非表示/違反報告)
藍沢せんせすき - 面白すぎます笑楽しみにしてるので更新頑張ってください^ ^ (2017年9月19日 22時) (レス) id: 0944e50e01 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ayanel
| 作成日時：2017年9月12日 0時
