青春をガラス瓶に詰めたなら

抱きしめてなんて言えない sgi ページ35

夜の11時。今日もこの家には私一人だけだ。


彼はとても忙しい。だから少しでも寂しい思いをさせないようにって言って私に同居しよって言ったのどこの誰よ。


彼が忙しいことは相変わらずで、同居してから一緒にご飯食べたり部屋でくつろぐなんてあまりしていない。


お互いの仕事が忙しい時期とかに相手に迷惑をかけないようにといって別々にした寝室が恨ましい。自室で寝るので朝起きた時に彼の温もりを感じるということもない。


そんなことを考えていたら少し寂しくなってきた。…そうだ、彼がプレゼントしてくれた彼に似てるぬいぐるみを抱きしめながら彼の部屋で待っていよう。


素直に気持ちを口に出すことができない私はこれくらいでないと気持ちを伝えられないのだから。



＊

sgi side


最近は会社での仕事が忙しく中々Aと一緒に過ごす時間がない。寂しい思いをさせてしまっているのは分かっていた。でも、もうそろそろで時間が取れそうだからと彼女が何も言わないことの上に胡座をかいていた。


今日も11時を過ぎてから家に帰った。Aはおそらく寝ているから起こさないように静かに行動する。


荷物を置くために自室へ入ろうとすると少しだけ光が漏れていた。


不審に思って部屋の中を確認すると俺の部屋でAがぬいぐるみを抱きしめながらベッドで寝ていた。…ぬいぐるみに少し嫉妬してしまいそうだ。


でもAの顔にはうっすらと涙を流したあとが残っている。


普段Aは俺に対して甘えることもないし、気持ちをぶつけてくることもない。それが彼氏としては少し悲しかったりする。


でもこんな顔を見てしまったら。もしかしたら泣いていたのは今日だけではないかもしれない。


｢ごめんな…｣


Aにこの呟きは聞こえているわけがないのだが、呟かずにはいられなかった。


明日は撮影もないし伊沢に頼んで有給を取らせてもらおう。それで明日はAをうんと甘やかそう。


そう決めてAの涙のあとにキスを落として彼女を包み込むようにして布団にもぐりこんだ。

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