【wrwrd】え、幹部??……逃げてもいいすか【男主】

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『そうですか。洒落てますねぇ』

奇抜だな、という本音は腹の底にしまっておく。
正直者がいつでも得をするってわけじゃない。
言わない方がいいこともあるんだよ。うんうん。
なんて考えながらもんゆっくり相手から距離をとる。
だって俺知ってるもん。コイツ、最初の時といい前回の逃走のときといい、俺を撃ってきた奴だ。
気配がいっしょなんでな、分かるんだよ。
あの、「ちょっと外しますね」の弾を撃ってきた怖い人。

できる事ならば逃げ出したいけど、監視役に抜擢されるって事は遠距離だけが得意なわけじゃないって証拠だ。
室内ならば、遠距離より近接の方がくるだろうということで、距離を取る。

でもな、俺は今回あんま逃げる気ないからね。
前回の二の舞は踏みたくないし、誤魔化せば殺されないって事が分かったしな。
口ではそれっぽい事言ってるけど、この人達強い。怖い。
軍事国家だからなぁ、この国。
幹部がそこら辺の国の奴等とは比べものにならないってのはまぁ、そうだろうなって感じするし。

「…逃げないでくださいよ」

『おとなしくしてますよ、はい勿論』

なんか釘を刺された。そんなに俺って逃げようとしてるっぽいのか?
それに、逃げる逃げないの問題じゃないって。
逃げさせてくれないだろ。あんたら。
てな感じで、完全に諦めてます。俺の首もそろそろ切れそうだなぁ。
誤魔化すってか勢いだな。押そう。もう引かれるくらいに。

頑張れ俺。死ぬなよ。

あっはっは、と死んだ笑いを漏らしていたら。

「……何やってんすか、アンタ」

早速引かれた。ちょっと、顔ひきつってますよ。

『傷つきますって、その顔は』

「…なんかさーせん」

謝られた。余計悲しくなるからやめて。

多分この青年も幹部なんだろうな。年若くして出世ですか。
……羨ましい限りです。嫉妬しちゃう。
はぁ、と溜め息をついて顔を下げる。
…顔を動かす度に髪がバサバサする。ほんと邪魔。

『なんか紐みたいなんありませんか』

「え、死ぬ気っすか。駄目です」

違ぇよ。

そうか、普通はそういう捉え方になるんか。
俺、暗殺者だもんな。雇われてるもんな。
でも、守秘義務なんて守らんぞ。命だ命。情報漏らして俺が得するんだったら何でも漏らすわ。
……クズですけど?

しょうがないので服を脱いで、もう一度着て、髪を服の中に潜す。
あんま意味ないけど、いっか。
クリアになった視界で、青年を見上げると。

「…アンタ、もしかしてA?」

え、なんで俺の名前知ってんすか。

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