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「…もう大丈夫か?偉い慌てとったけど」
『うーん、何か、何とも言えないんですけど。ちょっと、変だなって思った事があって…』
「変だな?何、まさかストーカーの犯人でも分かったんか?」
『それは分かんないんですけど。うーんと…ちょっと言うの抵抗しちゃうな。私のただの勘違いかもしれないんですけど、』
背中を擦って落ち着かせてくれたトントンさんにお礼を言い立ち上がる。
『何か、今帰ってきてる途中から。いや、分かんないですけどもしかして最初から…?……誰かが着いてきて居たような気がしたんですよね、はは…』
「はぁ!?笑い事ちゃうやろ!!大丈夫か!?怪我は!?何もされてないか!?」
私の発言を聞くや否や、目を見開き慌てて質問してくる彼に狼狽える。おお、凄い勢い。
軽い口調で伝えたのが気に入らなかったのか、トントンさんは"詳細"と追求してくる。
『家まであとちょっとの所で気づいたし、怖すぎて振り向けなかったんですけど。歩行者は私しか居ない道だったのに何故か足音がもう1つしてて。おかしいな、聞き間違えかなぁと思って止まったりもしてみたんですけど、同じタイミングで音も止まるんですよね』
言ってて思ったが、典型的なやつじゃんこれ。
夜に女性が1人、そして周りに誰も居ないなんて状況でこんな事をされたら、幽霊にしろなんにしろ怖くならない訳が無い。
説明中に僅かに震える手を背に隠しながら、冗談交じりのトーンで言ったもののまだ気持ちは晴れない。そんな私にトントンさんは、「同一犯か、変な別のストーカーを引っ掛けたか…やな」と推理しながら、頭を撫でて来る。
「ほんまAは不運やなぁ。…ほら、あったかいスープ出来てるからあっちで少し落ち着こうや」
次は私の手をゆっくりと引くから、なんて優しい人なんだろうとたじろいだ。怖さを遥かに超えて、彼の思いやりに胸がいっぱいになって耐えきれずに背を向けたトントンさんの背中にぎゅうと抱き締めた。
いつもなら真っ赤になって小さく叱責してくるのに、今日ばかりはトントンさんは何も言わなかった。
「とりあえず、皆に報告しとくな」
スープを飲んでる時にそう言われたので素直に縦に頷く。
程なくしてロボロさんから個別に、"無理にでも送ってやれば良かった"なんて連絡が来たので、心配させまいと"本当ですよ!ぷんぷん!断った癖に偉そうですみません怒らないで"と送っておいた。
因みに晩御飯はエビチリじゃなかった。
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まる(プロフ) - 久々にこの手の類を見たくなって、極道に始まり、距離バグと脅威入手…団子侍様の独特で丁寧な小説を読んでしまうと、上質すぎて中々他のお話へ飛べませんw 楽しいお話をたっぷり読めて嬉しいです!今後も応援しております…! (2023年4月10日 8時) (レス) id: 33402943a7 (このIDを非表示/違反報告)
団子侍(プロフ) - 冬野さん» 完結してから一番乗りの超絶早いコメントありがとうございます!冬野様には何度もコメントを頂いて本当に嬉しかったです!最後までお付き合いありがとうございました! (2022年8月19日 1時) (レス) id: 1692a09b95 (このIDを非表示/違反報告)
冬野(プロフ) - わぁ〜!番外編までお疲れ様でした。すごく好きです。めちゃくちゃ好きです。ありがとうございました。大好きです。(語彙を失う) (2022年8月19日 1時) (レス) @page50 id: 017b983cf1 (このIDを非表示/違反報告)
団子侍(プロフ) - みひろさん» コメント&ここまで読んでくださって本当にありがとうございます!正しく全員分の心の内だったりを細かく書いて最後に終わりたいな〜と思っております!完結はしましたがどうぞ最後までお付き合い頂けると嬉しいです♪ (2022年8月15日 14時) (レス) id: 1692a09b95 (このIDを非表示/違反報告)
団子侍(プロフ) - 冬野さん» 冬野様 ご丁寧に、また思いの籠ったコメント頂き本当にありがとうございます。色んな方の反応やお声に支えられて無事完結できてホッとしております。今後とも何か作品をあげましたら是非宜しくお願いします! (2022年8月15日 14時) (レス) id: 1692a09b95 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:団子侍 | 作成日時:2022年1月30日 13時