Be My Last (ページ32)

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「忘れたわけじゃないだろ。お前が逃げ出さないように、母親はいつも監視してると」

俺の合図一つで、母親はすぐ殺せるのだと。
逃げ出そうとした時、何度も聞いたその言葉。冷や汗が首を流れる。
弟者さんは、不安な目で私を見つめた。

「弟者さん、私は皆さんにとても感謝しています。憎い仇を討つために、たくさん協力してくれた」

弟「Aちゃん…「でも、私にとって一番大切なのは母なんです。母を失うなら私は…」

恵比寿に向けていた銃口を、ゆっくりと弟者さんに向ける。
弟者さんは恵比寿に銃を向けたまま、硬直状態になった。

「いいぞA。早くしないと、母親の命が危ないからな」

スマホを取り出した恵比寿。その顔は至極嬉しそうに笑っている。

「弟者さん、本当にごめんなさい…」

弟「！」

「…ぐあっ！」

一層大きくなった笑い声は、発砲音でかき消された。
代わりに聞こえるのは、痛みに喘ぐうめき声。
そう、撃ったのは弟者さんじゃなく恵比寿だ。

「お前…！おい、母親を殺せ！」

利き手を撃ったため、もう片方の手でスマホを取り連絡する恵比寿。
弟者さんは、わけもわからずという形で、ただ銃を構えていた。
私は奴に近寄り、銃口を頭につける。

「気でも遣ったか…⁉、まさか」

『恵比寿様…指示された女性ですが、部屋はもぬけの殻です…』

スマホから聞こえたのは、おそらく母さんを殺そうとした部下の声。

「ぐっ…お前、謀ったな」

「謀ったも何も、あんたが母さんを引き合いに出すことは承知の上だ。そこさえ封じれば、もうお前は怖くない」

乙『いや～よかった』

弟「あー、ちょっとついてけないんだけど、乙一さんが裏で助けてたってこと？」

兄『敵を騙すにはまず味方からっていうだろ』

弟「え、知らなかったの俺だけかよ！」

そう、恵比寿と対峙する時は、必ず母親が鍵になることはわかっていた。
乙一さんに相談した時、「んー、なんとかしてみるわ」と言う軽い返事だったが、結果的に信じてよかった。

乙『お母さんは、ちょっとびっくりしてたみたいだからおねんねしてもらいました。でも信頼できる人に預けてるから、今は安心してOKよ』

「了解」

弟「じゃあこっちもおねんねしてもらわないとな」

「ま、待て！殺すのだけは、…金はやる！何でもしてやるから殺さないでくれ！」

「何でも？」

今度笑うのは、私の方だった。