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2broのアジトは、街から外れ少し坂を登った所にある。
静かで木々に囲まれたこの住処が、すでに気に入っていた。
特にお気に入りなのが自室のベランダ。
夜風に当たりながら虫の声に耳をすます、そんな時間が好きだった。
今夜も早速外に出ると、煙草の煙がふわり。
弟「Aさん」
「煙草吸われるんですね」
弟「たまにですけど」
と言いつつ煙草を落として足で踏み消す弟者さん。彼の部屋は私の右隣で、同じくベランダに出て涼んでいたようだ。
弟「あ、待って…これ、良かったらどうです?お酒じゃないけど」
「いただきます!」
弟「へへ…じゃ乾杯」
差し出してきた缶ジュースをもらって、弟者さんの持つ缶とくっつけた。
あまいりんごの味が炭酸とともに口に広がる。
弟「……あー、あの…俺ずっと言いたいことがあって」
「何です?」
弟「…うーんと、だいぶ前のバーのことで…」
バーのこと。
『俺、あなたが好きかもしれません』
弟者さんの真剣な顔と声がリフレインする。
弟「変なこと言ってすみません。あれ作戦の1つで…」
「分かってますよ。こういう感じで来るんだ、って困惑しましたけど」
そんなことで謝るなんて真面目だ。
裏表がないこの感じから、人の良さを伺える。
弟「でも、俺あの時からAさんは悪く見えなくて。勘当たってました」
「…私も、弟者さんがあんまり誑かそうとしてるように見えなくて、良い人そうだって印象を持ちましたよ」
弟「じゃあ作戦成功だ」
静かな夜に2人の笑い声が響く。
すこし前まで敵だった人たちと、こんなにも仲良くできるなんて思ってもみなかった。
「ところで、弟者さんて私より年上ですよね?どうぞそんな畏まらず…」
弟「え?いくつですか?」
「25です」
弟「え⁉ずっと同じくらいだと思ってた…すげえ…」
「ふふ、すげえって…そんなに老けてるって言いたいんですか」
弟「いや違う違う!落ち着いててすごいってことです」
「どうも…だから敬語とかやめてくださいね」
弟「マジか…うん、てか俺にも敬語じゃなくていいよ。もっと仲良くなりたいし」
「乙一さんにも言われました…みなさんほんとに良い人ですね」
弟「え、乙一さんにも?…ほ〜手が早いなぁ」
「手?」
弟「いやなんでも!俺そろそろ寝ようかな」
「私も…じゃあおやすみなさい」
弟「うん、おやすみAちゃん」
自室へ戻る弟者さんを見送り、私も部屋へ戻った。
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キエ(プロフ) - ユメさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 7ecf668470 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 内容こってて好きだな (2019年4月29日 1時) (レス) id: 8bc30f3fbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キエ | 作成日時:2019年3月31日 22時