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伝えた通り、彼らにはすべての情報を開示した。
私のこと、奴のこと…証拠がとれて、乙一さんもようやくちゃんと信用してくれたらしい。
私自身も、軽く歩く程度には回復していた。
乙「改めて、疑ってごめんね」
「その話はもう言いっこなしです」
乙「そうだね…あ、じゃあご飯行こう」
「…急ですね」
乙「急じゃないよ、あの晩僕誘ったじゃない。お詫びだって」
あの晩。騒動前の、乙一さんがバーに来た日。思い出し、すこし気恥ずかしくなって言葉を濁す。
乙「近くに良い感じのカフェがあるから、そこで早めのお昼にしよう。あいつらどうせまだ寝てるしさ」
「ええ、いきましょう」
ご兄弟は昨夜遅くまで偵察。だからまだぐっすり寝ている。
いたずらっぽく笑うその笑顔に、自然と私も笑みが零れた。
***************
乙「ね、良いとこでしょ」
注文を済ませ、テーブルへ。
連れてきてもらったのは、路地裏にある隠れ家風のカフェだった。
昼時だが、平日だからか割と空いている。
乙「ところで、もう戦えそう?」
「そうですね…激しく動くと傷口が開くかもですけど」
乙「うん…兄弟に頑張ってもらうしかないな」
「いえ、私も頑張りますよ。1人でやってた時は、もっとボロボロでやってましたし」
乙一さんが何か言おうとしたが、ちょうど店員さんがプレートを持ってきた。
「おいしそうですね!」
乙「そうだね、怖い話はやめて食べよう」
「はい、いただきます」
乙一さんは、物腰が柔らかくとても話しやすい。でも、時折何を考えているか分からない節がある。
実際前に接近した時もそうだった。
乙「…ふふ、Aちゃんて意外とやんちゃだよね」
「?」
乙「ここ、ついてる」
そう言って手を伸ばし、私の口元に触れた。あの晩の彼と重なり、反射的に顔が熱くなる。
乙「照れ屋さんだなぁ」
「…というか、耐性がないんです、人間に。今までこうやって話す人もあまりいなかったから」
乙「ふむ…じゃあたくさん仲良くしよう、君はもう仲間なんだからさ」
「…はい、ありがとうございます」
乙「タメにしよう!僕気にしないから」
「えー?うーん、分かったです…」
乙「ロボットかよ」
優しい笑顔と、まるで普通の人のような会話。
仕事柄、いつも街中で楽しそうに語らう人たちを見ていた。まさか私にもそんな時間が来るなんて…
「ありがとう乙一さん」
何が?と訊ねる、その顔を見てまた微笑んだ。
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キエ(プロフ) - ユメさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 7ecf668470 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 内容こってて好きだな (2019年4月29日 1時) (レス) id: 8bc30f3fbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キエ | 作成日時:2019年3月31日 22時