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乙「正直僕も驚いたよ。ヘリで迎えに行ったら、この兄弟が君を抱えて『Aは敵だった。でも助ける』なんて言いだすんだもん」
兄「俺じゃないよ、助けようって言ったのはこいつ」
弟「素直じゃないなあ…はは、まだぽかんとしてるね」
弟者さんは私を見て笑い、こう続けた。
弟「確かに殺そうとした事実は変わらないけど、それを言うなら俺らもそのつもりで疑ってた。
それに、結局Aさんも恵比寿の敵になったってことでしょ?」
「そう、ですね…多分」
乙「“昨日の敵は今日の友”だね。君さえよければ、恵比寿を討つまで一緒に組んで欲しいんだ」
「…なるほど」
確かに奴に詳しい私を入れた方が成功率が上がる。
納得しつつ、一方であることを思い出していた。
「もうあいつの部下じゃないのか…」
兄「なんか訳ありなんだろ、…お前みたいな手練れが、無条件であんな奴の下につくとは思えないからな」
そのまま口に出してしまったと、兄者さんの言葉ではっとする。
乙「その辺も含めてさ、ゆっくり聞ければいいかなって思うんだ。もちろんAちゃんが話したい範囲でね…
でもまずは、ご飯食べて薬飲もうか」
弟「そうだね、休んだ方がいい…ってまた血でてるよ!?」
自分の肩を見れば、ぽつりと赤い染みが浮かんでいた。
乙「では乙一先生が手当てするので君達は出てくださーい」
弟「はーい。兄者ゲームしようよ」
兄「いいけど、俺が勝てるやつな」
兄弟は私にひらりと手を振り、外へ出て行った。
乙一さんは、薬箱を取り出して包帯の準備をしている。
手際の良さに感心していたら、彼と目があった。
乙「まだ警戒してる?」
「…いや、ここまで手当てしてもらってるので、嘘ではないのは分かるんですけど…」
乙「まー、この前までターゲットだった奴らに世話されてりゃ、慣れないのは当たり前だよ」
ゆっくりでいいから、と笑いながら話す。バーで会った時より、随分優しく笑う。
乙「じゃ、服脱いで」
「はい?」
乙「はい?じゃないよ包帯変えるの!言っとくけど、最初来た時も僕が脱がしぶっ」
「すみません咄嗟に…自分でできます」
乙一さんの顔からずるりと枕が落ちる。
乙「枕投げれる元気があれば大丈夫だ…じゃ、なんかあったら呼んでね。それ食べてもう一眠りするといいよ」
彼の背中を視線で見送り、1人残された部屋で息をつく。
不思議な縁もあるもんだ。でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
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キエ(プロフ) - ユメさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 7ecf668470 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 内容こってて好きだな (2019年4月29日 1時) (レス) id: 8bc30f3fbe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キエ | 作成日時:2019年3月31日 22時