Be My Last (ページ11)

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あの情報が彼らの耳に行き届いたか。最近の憂いはそれだけだった。
いずれにせよ、その日は恵比寿の身辺警護で出ることになっているから、あとは待つだけなのだが…。

「A、お前に客だとよ。ついでにもうあがっていいぞ」

「客？……げっ」

マネージャーがステージの方を指差すので、グラスを置いて顔を上げる。
ダンサーに囲まれた緑の男が、ひらひらとこちらへ手を振っていた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

乙「弟者くんに話聞いてさ、見てみたいなぁって。でも踊り子さんじゃなかったんだね」

「ええまあ…」

先日と同じバーにて、今夜は乙一さんと。
一杯だけ、とつよく押されて来てしまった。

乙「弟者くんと何話したの？」

「そうですね…乙一さんや兄者さんのお話を聞きましたよ。弟者さん、とってもおふたりのことが好きなんだなぁって」

乙「ふーん…僕は君のことが知りたいなぁ…」

ぐいっと席を近づけてくる。またこのパターンか、と身を固くする。最初も思ったけど、飄々として考えが読めない男だ。

乙「例えばさ、僕と兄弟だったら誰が好み？」

「うーん、みなさん知らないのでなんとも…」

乙「そこは僕って即答してよ～」

心底どうでもいいと思いつつ、笑う彼を横目でみる。
彼らの目的は分かっているからこそ、なぜここまで近づいてくるのか分からない。

乙「ねえ、Aちゃん」

「はい」

続く言葉が聞こえなかったので乙一さんを見る。じっと見つめ、ゆっくり両手を伸ばしてきた。

「な、何です？」

乙「いやぁ…なんか上の空というか、考え事してるみたいだからさ」

さらにわたしの頬を両手で包み、彼の整った顔をギリギリまで近づけてくる。

「ちょ…っ！」

乙「きれいだ」

急激に顔が熱くなるのが分かった。振り払おうとすると、さっと体を引かれわたしの手は空を切る。

乙「ふふ、顔真っ赤」

「…そんな笑わないでください」

乙「ごめんごめん、初心なんだね…からかったお詫びに美味しいご飯奢らせて。次の土曜とかどう？」

早鐘を打つ心を落ち着けながら頭を巡らせる。次の土曜は……恵比寿のパーティーだ。
なるほどこれが聞きたかったのか。

「ごめんなさい、仕事で…翌日なら」

乙「…ん、わかった！じゃあ日曜迎えに行くね」

生きてればね、と思いつつ頷く。実現しない約束に、我ながら悪い女だと思った。次会うときはもう…

乙「そろそろ行こっか」

こうしてこの日はお開きになった。