【第百十三訓】 ページ23
ズカズカと客室の並ぶ廊下に踏み込んでいく一行。
ラフな着物姿の利用客の中に、
かっちりした黒光る隊服姿の彼らが一際目を引いた。
あちこちからひそひそと何かあったのかという声が聞こえる。
手前の扉からノックして開けていく。
廊下を挟み両側に十室ほどが並ぶ客室。
土方と沖田に分かれ、背中合わせでひとつずつ確かめる。
「邪魔するぞ、こいつ見てないか?」
「お楽しみのとこ悪いが、
この女に見覚えねーかィ?探してんだ。」
順調に部屋の開け閉めを繰り返し、残るは最後の2部屋。
「いくぞ。」
「へぃ。」
コンコンコン
両側でノックの音が響いた。
「おいおい、あのねえちゃん大丈夫かよ…。」
身内に追われている真選組隊士。
それもかなりの役職者。
とんでもないものを匿ってしまった。
「何やったんだろうな…。」
足止めに失敗した店員。
失敗した時どうなるかと散々脅された彼は、
どんなに酷い目に遭わされるのかと内心震えている。
背後から男たちの足跡が迫っている。
「おい。」
「おい、おっさん。
聞いてんのかよ。」
気づけば真横から土方に顔を覗き込まれていた。
「はっはい!!」
声の元へ振り返った。
*

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作者名:威杜 | 作成日時:2025年2月1日 18時