真選組の精鋭隊士なのに攘夷思想が芽生えそうです。【銀魂】

【第八話】 ページ12

あれからどのくらい時間が経っただろうか。


Aは寝転んだまま、本当に寝入ってしまっていた。


「Aー。いるか？」


何度か呼びかけるが返答がない。


自室にいるんじゃなかったのかよ、といらつき始める土方。


厠にでも行っているのだろうか。


いずれにせよすぐ帰ってくるだろう。


「ったく…。待ってるとすっか。」


障子に手をかけ部屋に踏み込む。


「…んんぅ…」


「はっ！？」


良い事と悪い事がひとつずつ。


良い事はAは見つかった。


悪い事はAの寝乱れ姿を直視しているこの状況である。


隊長格以上が身につけるスカーフ。


Aは肩書きこそないものの、その常軌を逸した戦闘センスを理由に支給されている。


当然ながら寝苦しいらしく、無様にくしゃくしゃになったそれが首元に纏わりついていた。


「土方さん…？」


上体を起こし赤子のように眠い目を擦るA。


「お、お前それなんとかしろっ！！」


惚けた頭上にはてなを浮かべゆっくりと辺りを見回して事に気付く。


ただの寝乱れなのだが、そんな事は露知らず。


普段の隊服より大きく開いた胸元の布を両手でかき集めたのも束の間。


「何さらしとんじゃワレえええええええええっ！！！」


プチパニックとでも言うのだろうか。


土方の手によって行われた愚行と勘違いしたAが、徐(おもむろ)に手に持ったものを手当たり次第に投げつける。


顔面にボールペンの特大ヒットを食らい、弁解する間も無く倒れ込む土方。


一方のAは肩で息をしながら、漸く(ようやく)思考が目覚め始めていた。


「あ、やべ」


額から血を噴き出す土方に、生きてます〜？と声をかける。


「私がやったら総悟さんに怒られちゃう。」


そこではない、というツッコミは残念ながら不在である。



✴︎

【第九話】→←【作者より】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す