ごじゅういち ページ1
「ただいま」
いつも通り家に帰るといつもみたいに「おかえり！」って元気な声がしなかった。
寝てるのかなとかまだ帰ってないのかなとか。思いながら、部屋に入るとなにかが足りないことに気が付く。
、、、Aの荷物がなにもかもない。
最近買ったばかりで、お気に入りの少し不細工なカバのぬいぐるみも。下ろしたての一緒に選んだワンピースも。
ペアのマグカップだって、1つしかない。
テーブルの上には、メモ用紙が1枚おいてあって。
“お世話になりました。A”なんて、書いてある。
頭が真っ白になった。
喧嘩をした覚えもないし、我慢をさせていたり無理をさせていたつもりもなかった。それに、我慢や無理をしている素振りもなかった。
、、どうして。
なにかのドッキリなのではないか、1番上でピン留めをしているトークを開いて【どこにいるの？】と送るけれどすぐには既読にならなくて。
電話をかけるけれど、呼出音が鳴るばかりで出ることはなかった。
仕事中なだけなのかも。
きっと、夜が明ける頃には折り返しの電話や返信が来ているはず。
*.
*.
だと思っていたのに。
既読すらついてないメッセージに、折り返しの受信履歴を示さない着信履歴。
なにも、理解ができなかった。夢ならば、早く醒めて。
腕の中にいるAを抱き締めて「ちょっと変な夢見た」
って慰めてもらって。
それからAは「わたしはここにいるんだけど」なんて困ったように笑ってくれるんだ。
「もうやめてよね〜、勝手に出て行かせないで」なんて茶化してくるかもしれない。
そう思っても、進んでいく秒針や確実に感じている空腹が、これを現実だと突き付けてきた。
時間通りに迎えに来たマネージャーはなんだか少し気まずそうな顔をしていて。なにか知ってるな、と確信付く。
「SixTONESのAに会いたいんだけど、連絡取れる？」
マネージャーはおれらの関係を知っているからこんな言い方しなくてもいいのだけれど。なぜかこう言わないといけない気がした。
『すみません、彼女については箝口令がしかれているので』
「彼氏だから良くない？」
『、、、すみません』
謝るしかしないマネージャーを諦めて、タイミング見計らって北斗にでも連絡しよう、そう心に決めた。
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