殺人鬼にココアを【黒】 (ページ10)

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No.10 ページ10

残り19日

朝と昼はまた気まぐれに過ごし、夜。

ご飯を食べている時、なにか視線を感じた。

ハッと向かい合わせに座っている北斗を見るといつもと目線が違う。この目線は覚えてる。11日前のあの、帰ったあと北斗がカミングアウトした時の目線だ。

『北斗......？』

「怖くないんだ。俺殺人鬼なのに。何人も人殺してるしAを殺さない確信なんかないのに。俺といて怖くないわけ？」

『北斗が私を殺したら、私も北斗を殺すんだよ。そういう約束をしたから。私は......北斗を信じるよ？』

「心中とか太宰治とか純愛とか、くだらない。俺がたまたまAを殺すかもしれない。なんの悪意もなく不意に殺すかもしれないし悪意の塊でAをめちゃくちゃにするかもしれないのに。」

『いいよそれでも。北斗に殺されるなら本望だって。』

照れるから何回も言わせないでよ。

そう言おうとすると北斗の目線がやさしくなり、また元のように黙々とご飯を食べてる。

『北斗......？』

「ん？このエビフライ美味しいね。」

今までのことが嘘のようにケロッとしている北斗にびっくりしながら、一つだけヒントを手に入れることができた。

今この瞬間の北斗をもう1人の北斗は観察している。いつも見ている。でも本当の北斗はもう1人の北斗を見ることが出来ない。多分入れ替わったとわかる時もあるのかもしれないけれど今はわかっていない。

言うべきか、言わないでおくべきか。迷った末に言わなかった。
もう一人の北斗も、どうせなら私の虜にしてやろうと思ったから。

もう一人の北斗は多分私がこのことを北斗に言うと思ったんだろうけど。私はあえて言わない。

今後もこういうことがあるかもしれない。でもそういう時はよく考えてもう一人の北斗が思っていることの逆をしようと思う。

本当の北斗はこれで落とせたんだから

もう一人の北斗も落とせるはず。だから。