忘れ物 ページ35
「あ、悪趣味です……!」
『すまん』
「な、何で僕の寝顔なんか撮ってるんですか?!」
『カメラがあったから?』
「やめてください」
そうボインゴくんに睨まれて、私はカメラを下ろした。
うむ、確かに盗撮は良くない。
お見舞いで持ってきたフルーツの盛り合わせを撮るべきだったか。
「あ、そう言えば僕達あと1週間で退院ですよ!」
『おぉ、良かったじゃん!』
あのジョースターさんのとこの犬に噛まれた事件から約1週間……もう暫くは再起不能かと思っていたが子供の回復力は計り知れない。
『ねぇボインゴ君、りんご食べる?』
私が持ってきたフルーツに、じっと目を配っている彼にそう聞くと軽く頷いてくれたので私はフルーツバスケットの中から1つリンゴを取り出した。
ペティナイフで皮をむいて、芯を取って適当にくし切りに。
『どーぞ。あ、ホル・ホースさんも起きてるなら食べてください』
「なっ、バレてたのかよ!」
『バレバレっすよ、同じ病室なんだし』
たとえ顔中包帯ぐるぐる巻でも雰囲気で分かるものだ。
「……あれ、マライアとケニーGじゃあねぇか?」
『え?』
リンゴをかじりながらホル・ホースさんは窓の外を見て言った。
聞き覚えのある名前に窓の方に視線を向けると、2人の男女が手を繋いで歩いていた。
ホル・ホースさんの言う通り、あのスタイル抜群の美女はマライアさんで、男の人はDIOの館で働いていたケニーGさんだった。
あのコンビの組み合わせは異様だが、久しく見てなかった2人が幸せそうなので良かった。
「けっ、主が死んで速攻あれかよ。マライアのやつ悪趣味だぜッ!」
『……あの、悪趣味って言葉流行ってるんですか?』
「え、そうなのか?」
3日前にも空条承太郎が私に言った。
彼は何を見て私を悪趣味と言ったのかは分からない。
けれど、あの冷たいコバルトグリーンの瞳が脳裏に焼き付いて離れないのだ。
どういう意味なんだろう。
……もしかしてDIOの事だろうか。
彼が死んでも尚、私が未練がましくしてる事だろうか。
SPW財団が私に渡してきたあの"写真"の事か。
思い当たる節はいくつかあった。
「おーい、聞いてんのか嬢ちゃん」
『え、ごめんなさい何て言いました?』
「だーかーら、嬢ちゃんはケニーGと俺だったら絶対俺を選ぶだろ?」
『うーん、どうだろう。また違った"別の人"を選ぶかもですね…!』
「いやいや、それはナシだろ!」
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俺☆ - やばいめっちゃ面白いのにめっちゃ感動してる。何だこれ。 (2023年1月5日 11時) (レス) @page50 id: b2c114123d (このIDを非表示/違反報告)
Earthあーす(プロフ) - あれなんか目がナイアガラの滝になってる (2023年1月4日 18時) (レス) @page43 id: 0fcf2cea39 (このIDを非表示/違反報告)
しらとめ(プロフ) - 面白いのになんとなく泣きそうになってきます (2022年11月28日 17時) (レス) @page35 id: 353a651934 (このIDを非表示/違反報告)
地獄の番人 - DIOの代わりに空条承太郎パイセンとくっついちゃいましょう!!面白かったです。続きを楽しみに待ってます!! (2022年11月28日 1時) (レス) @page33 id: d126292683 (このIDを非表示/違反報告)
ペトリ皿(プロフ) - やばい。展開も何もかもが面白すぎる。 (2022年11月27日 18時) (レス) @page32 id: cbc38767b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:光と慈雨 | 作者ホームページ:http:// http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時:2022年9月5日 23時