分岐 ページ29
"私の名前はA、年齢18歳.....ってもう知ってるか。"
Aは笑いながらそう言って、肩からずり落ちそうになる黄色の上着を引っ張った。
マイペースに話し始める彼女に、DIOは段々じれったい気分になっていく。
「さっさと話せ、じりじりする」
『じりじり?ムズムズじゃなくて?』
「そんな事はどうだっていい、そのスピードで話していたら夜が明けると言ってるんだが?」
『ごめんて』
Aはもう一度笑うと、仕方なさそうに話し始めた。
"自分から話してあげると溌剌に言っておきながら、結局何なんだコイツは"
DIOはそう呆れたように思いながら、彼女の声に耳を傾けた。
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「ねぇ、進路どうすんの?」
高校3年の時の夏
夕食の準備をしていた母が、ため息混じりの声でそう聞いてきた。
"周りの子はもう決まってんのに何であんただけ?"
とでも言いたそうな表情で。
うん、まぁ確かに。
そろそろ真面目に考えなければいけない時期だってのに、Aっ奴は何してんだろう。
他人事のようにそう思いながら、私は母から目を逸らして目の前にある麦茶に手を伸ばす。
『…んー、どうなんだろうね』
「どうなんだろうねって自分の事でしょう?」
『まぁ…ね』
「まさか、あんたカメラとか言うつもりじゃないでしょうね?」
『言わないよ』
「もうやめてよね、"あの人"の 遺品なんか掘り出してくるの」
私は母の言葉に素直に頷くことが出来なかった。
遺品なんか……か。
私の父は有名なカメラマンだった。
自分の個展をよく開催していたし、出版社からの広告のオファーも沢山来ていて忙しそうにしていたのを覚えている。
私は父の撮る写真が好きだった。
カメラのシャッターを押した瞬間、その時間だけが形になって切り取られる。
もう一度同じものは作れられない。
繊細で創造的で、何より美しかった。
そんな父の写真に影響されて、小さい頃から私も常にカメラを持っていた。
将来は父のような写真家になるんだと…そう思っていた。
しかし、父は私が14の時に交通事故で亡くなった。
人柄も良くて優しくて、少しチャラ付いていたけれどそんな父が亡くなって沢山の人が悲しんだ。
私も暫くは放心状態だった。
けれど、母だけは父が死んでも悲しまなかった。
元々、父は浮気性な所があって母をよく困らせていたからなのかもしれない。
「罰が当たったのよ」
お通夜でも涙1つ流さなかった。
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俺☆ - やばいめっちゃ面白いのにめっちゃ感動してる。何だこれ。 (2023年1月5日 11時) (レス) @page50 id: b2c114123d (このIDを非表示/違反報告)
Earthあーす(プロフ) - あれなんか目がナイアガラの滝になってる (2023年1月4日 18時) (レス) @page43 id: 0fcf2cea39 (このIDを非表示/違反報告)
しらとめ(プロフ) - 面白いのになんとなく泣きそうになってきます (2022年11月28日 17時) (レス) @page35 id: 353a651934 (このIDを非表示/違反報告)
地獄の番人 - DIOの代わりに空条承太郎パイセンとくっついちゃいましょう!!面白かったです。続きを楽しみに待ってます!! (2022年11月28日 1時) (レス) @page33 id: d126292683 (このIDを非表示/違反報告)
ペトリ皿(プロフ) - やばい。展開も何もかもが面白すぎる。 (2022年11月27日 18時) (レス) @page32 id: cbc38767b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:光と慈雨 | 作者ホームページ:http:// http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時:2022年9月5日 23時