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(福良side)
本日の仕事を終え、帰路に就く。こんな早い時間に帰るなんて久しぶりだな。ここんとこ仕事が立て続けに舞い込んできていて、有難いことではあるけれどやはり社会人、体が資本だ。
俺の仕事量に見兼ねた伊沢と河村から仕事を取られて、早い時間に帰宅できることになった。
こんな時間に帰ったことそうそうないからどうしようかな。なかなかご飯に誘えていない人でも誘ってご飯でも食べに行こうか。
そう思ってLINEのトーク一覧を下へ下へスクロールすると、Aのトーク画面が見えてきた。
A拳くんもお誕生日おめでとう!体に気をつけてお仕事頑張ってね〜!
トークの日付は8月7日。そう、俺の誕生日。幼馴染であるAとはこうして年に一度、誕生日おめでとうのLINEを送りあっていた。
それ以外で今のところAとLINEのやり取りをしたのは…ここ最近ではない。本当はもっともっと話がしたい、会いたいのだけれど勇気が出ない。
唯一誕生日の日だけ、LINEを送りあっているのだがその誕生日もAも俺と同じ誕生日であるため本当に年一でしか連絡を取っていなかった。
「子供の頃はあんなに同じ誕生日だったのが特別で嬉しかったのに」
まさか、大人になってからこんな弊害があるとは。まぁでも誕生日同じじゃなかったら大人になっても連絡取り合う仲にすらなってなかったかもしれない。
何だか誰かを誘ってご飯に行く気分でも無くなってしまった俺はスマホをしまい、真っ直ぐ家に帰ろうとしていた。人混みの中で少しつまらなさそうな顔をして、ライトアップされたショーウィンドウを見つめるAを見つけるまでは。
.
「仕事の方は相変わらず忙しいの？」
立ち話もなんだから…と、近くのレストランに入った。久しぶりのAに心臓が飛び跳ねる。平常心、平常心…
「案件もいくつか抱えてて、最近オフィスも広いところに引っ越したし、人員もどんどん募集してるところかな」
「最初はほんと小さなチームみたいなものだったのに今じゃしっかりした会社だもんね」
「Aは？映像系の会社だっけ？」
「そう、まあこの時間に帰れるくらいにしか仕事も与えて貰えないし、最近やりがいがあまり見つからなくって……」
たしか、映像関係に詳しい人が欲しいって言っていたのをオフィスでチラリと耳にした気がして、気付いたら口走っていた。
「A、良かったらうち来ない？」
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作者名：ひなた | 作成日時：2021年9月19日 10時
