アップルパイほど甘くない ページ20
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「ところで、何をそんなに嘆いているの祥彰は」
「それがさぁ、聞いてよAちゃん…」
編集前の先程の動画を拳くんのパソコンで見せてもらうと、嘆いていた理由が分かった。途端大笑いしてしまって、祥彰に睨まれてしまった。
「良い動画が撮れたと思わない?」
「そうだね、これはQuizKnock史に残る動画だと思うわ」
「福良さんまで!僕をいじめる!」
動画の中でしおらしく謝罪して縮こまってる祥彰が可愛くてにやにやしていると思わず須貝さんに「おい、悪い笑みを浮かべてるやつが居るぞ」と陰口を叩かれてしまう始末。
「あはは、Aちゃんにやにやする癖相変わらず治ってないんだね」
「え、そんな人の顔みてにやにやする幼稚園児だったの、私」
「ひでー」
こうちゃんに言われた通りだ。拳くんの幼稚園の頃の私の印象がにやにやする女の子だなんて、恥ずかしいにも程がある。さっきまで祥彰がいじられの標的だったのに、いつの間にか私が標的にされてるし、おのれ拳くんめ…!
「こんな悪い笑みを浮かべる幼稚園児だなんて、どんな幼稚園児だったのよあなた」
「その辺にいる普通に可愛い女の子だと思ってたんだけどなー」
「普通の女の子は自分で自分のこと可愛いなんて言わないから」
顔よし頭よしのナイスガイにそう辛辣に言われちゃあ私ももう立ち直れない。机に項垂れていると、頭上からナイスガイの高らかな笑い声が降ってくる。須貝さんの方がよっぽど悪い笑み浮かべてるよ…!
「…でも、Aちゃん幼稚園ではとってもみんなの人気者だったよ。いつも男の子の間では可愛い可愛いって評判だった」
「え…」
思わぬ発言に、発言主の拳くんを見るも拳くんはコーヒーカップを片手にいつもの爽やかスマイル。……その男の子たちに、拳くんは含まれているのかな…
「まー、でもAちゃん。大学の学部でもマドンナ的な存在だったもんね。今、後輩たちがマドンナが居なくなって嘆いてるよ」
「え?!そうなの?!なんで在学中にもっとマドンナ扱いしてくれないの?!」
「照れ隠しじゃない?なんか暗黙の了解があったみたいだし」
なんだなんだみんなして。いきなり思いもよらない言葉を掛けられて、どうしたらいいのか分からない。褒められ慣れて無いんだから、やめてよ!
「はは、耳まで真っ赤じゃん。まじウケる」
「笑うなっ」
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時