すべては彼女の心次第 ページ19
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これはQuizKnock史に残る名動画?問題作?が出来た!!と撮影を終えた伊沢さんたちが部屋にぞろぞろとやってきた。伊沢さんの後ろには、けたけた笑うこうちゃんと何故かがっくりと肩を落としている祥彰の姿が。
あれ、祥彰動画撮影してたんだ。普段の動画に出てるなんて珍しいな。
「祥彰、どうしたの?そんなに落ち込んで」
「Aちゃん…」
「んん?」
今にも泣き出してしまいそうな、そんな顔をしていて思わずぎょっとしてしまった。あの、天真爛漫で、お調子者の祥彰が?泣きそう…?
「えっ、本当にどうしたの?大丈夫?」
「僕…やらかしちゃったよ〜!!」
「う、わぁ…!」
屈んで顔を覗き込むと、ガバッと祥彰が覆い被さるように抱き着いてきた。その拍子にバランスを崩して、祥彰と共に床に倒れ込んでしまった。
「あいたっ!〜〜つぅっ!」
「わわわ、ごめんAちゃん。勢い余りすぎた…」
いくら背の低い祥彰でも力は男の人そのもので。彼にとっては軽い気持ちでも私はいとも簡単に押し倒されてしまった。
咄嗟に祥彰が起き上がろうとする。その時、祥彰が立ち上がるよりも早く───
「うわっ!!あ、ありがとうござい「大丈夫?!Aちゃん!!」
「…へ?あ…うん。大丈夫、だよ」
拳くんが飛んできて、祥彰を力いっぱい引っ張り起こして私から即座に引き剥がしたのであった。あまりの焦りように祥彰も、私も隣にいたこうちゃんもびっくりしてる。
「…何も無いなら良かった。ダメだよ山本、女の子押し倒しちゃ」
「あ…ごめん。Aちゃん…」
「ううん。私は平気だから、ね?そんなに落ち込まないで。拳くんもありがとう」
「…どういたしまして」
拳くんが差し出してくれた手を掴むと細いしなやかな腕からは想像も出来ない力で引っ張り起こされる。ほとんど足に力を入れてないのにすくっと立ち上がれた。
「私よりちっこいのに、いっちょ前に力だけはちゃんとあるのね、祥彰」
「あー!またちっこいって言った〜!!」
「ほれほれ、慰めてんの。大人しくしなさい」
……本当は、あの力強さが、少しだけ恐怖に感じて、だけど安心した。恐怖と安心。全く正反対なのに、何でか拳くんからはいつも優しさが溢れていた。
例えるならば聖母マリアのような愛に満ちた眼差しでいつも遠くから私を見ていてくれて。
そんな拳くんがあんなにも焦っているのが、私は不思議でたまらなかった。
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時