払い除けた掌 ページ12
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12月。都内某所。QuizKnockに加入してから1ヶ月近くが経った頃、ライターさんもどんどん増えてここらで一度顔合わせをしようという話になり、季節外れだがメンバーを集めてBBQをする事になった。
「初めまして、渡辺航平です」
「ひぁっ…」
突如後ろから不意に声をかけられ、変な声が出そうに……いや、もう出てた。余程私の反応が面白かったのか、渡辺航平と名乗った人物は私の目の前でクスクスと笑う。
「そんなに笑わなくっても…」
「ごめんなさい、そんなにびっくりされると思わなくて」
第一印象絶対変な声出す変な人じゃん……、男の人なのにそこまで恐怖を感じさせない彼は、みんなからは「こうちゃん」と呼ばれ、今のところQuizKnock最年少のよう。
「Aちゃーん、お肉持ってきたよー」
「あ、祥彰」
「あ、山本さんですね。初めまして、渡辺航平です」
「初めまして!僕は山本祥彰です!」
そういえば、ここは一つしか年が違わないから話もそれはそれは合うんだろうな。お互いクイズプレイヤーだし…
完全に二人で話しが盛り上がって若干の置いてけぼりに。仕方なく2人の話を軽く聞きながら、祥彰が取ってきてくれたお肉を頬張る。
うん、何話してんのか全然分からん。
「ちーっす、初めまして!君がAちゃん?」
「…いやっ!!」
───バシッ!
「あ…、ご、ごめんなさい…!」
「い、いや…こっちこそ、なんかごめん!」
またもや誰かに背中から声を掛けられる。だけど、さっきと明らかに違うのは私の肩にさりげなく置かれた手、だった。
ほぼ、反射的に肩に置かれた手を振り払ってしまう。自分のした事に気づいて振り返るももう遅い。挨拶に来てくれた高身長の彼はとても申し訳なさそうな顔で何度も謝ってきた。
……あぁ、謝らなければいけないのはこちらなのに。
やっぱり、まだ男の人への恐怖心は薄れていないのだな…と自分のした事へ罪悪感が募った。
「Aちゃん…大丈夫?」
「うん…私は、平気」
「須貝さん、Aちゃんに何したんですか」
「ちょっと、挨拶に来たんだけど…」
馴れ馴れしくてごめんな。
須貝さんと呼ばれた彼がまた私に謝ってきた。少し寂しげな彼の表情が私の心を痛めた。そんな顔にさせてしまっているのは、私のせいなのに…
「大丈夫。須貝さんは悪い人じゃない。良い人だよ。大丈夫、大丈夫…」
「ごめん、祥彰…ありがとう」
祥彰がぎゅっと私の手を掴んでくれて、少しだけ緊張が解けた。
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年7月29日 19時