夏の暑さに溶ける愛 / kochan ページ4
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「はー、この部屋最高〜」
撮影を終えて撮影部屋の後片付けを任された俺と、撮影が終わったにも関わらず空調の効いた部屋から一向に出る気配も無く、かと思えば片付けを手伝うという素振りも見せないA。
暑い季節がいよいよやってきた。
「片付け手伝う気ないなら早く執務室戻りなよ。あそこだって空調効いてるでしょ?」
「だって、廊下あーつーいー」
「いやいやいやいや。廊下なんて数秒しかいないじゃん!」
「いやだー、あーつーいー」
「暑い暑い言わないで!暑くなるでしょ!」
「じゃあ、さーむーいー」
「それもそれでおかしくなりそう」
涼しいはずの部屋でもそう連呼されれば、錯覚を起こして汗が額から噴き出しそう。そこまで俺は、膨よかな身体でも無いはずだ。
コードを束ねながら、Aの方をチラ見すればいまだに机に突っ伏して机からのひんやりを身体全体で感じていた。空調も効いてるこの部屋で何してんのこの子。その時、ふと、ある違和感を覚える。
「……あれ、髪の毛切った?」
「今頃ー?気づくのおそっ」
「え、いつ切った?」
少しだけ短くなったような気がしたAの髪の毛。毎日見てはいるけど、いちいち髪の長さなんて気にしていなかったのが本音だ。
「…昨日」
「いや、ちかっ。全然気づくの遅くないじゃん!」
「遅いよ!ふくらPは会ってすぐ気づいたもんねっ!」
「えぇー」
俺にしては気づくのが早いと、褒めてほしいところだったが当の本人はそれでは満足しないようだった。すっかりむくれてしまったAは俺に背を向けてソファの上で体操座り。
もー。そんなむくれないでよー。口からは発しなかったが心でつぶやく。
「拗ねないでー、機嫌なおしてー」
むくれてしまったAの後ろに立ち、後ろから抱きしめる。ちょうどAの肩に俺の顎がちょんと乗っかる。顔のすぐ横には首があるのでふっと息を吹きかけるとくすぐったそうに笑う。これでいつも、機嫌が悪いことを忘れて笑顔になってくれる。
「いつまでも機嫌悪い子にはお仕置きー、ふっ」
「ひゃあ!ちょ、こうちゃんっ!く、くすぐったい!」
「お仕置きだから我慢しないとダメだよ」
「ひゃあ、ちょ、やめてぇ!あははっ!」
今日も例に漏れなく、すっかり機嫌をなおしてくれたAは自分が怒っていたことなど忘れているようだった。
撮影部屋の外で終始中の様子を伺っていた伊沢さんに気付く事も無く、後で冷やかされるのも忘れてたけどね。
君に愛を伝えるには / sgi→←僕がこれだけ愛しているというのに / fkr
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作者名:りんご | 作者ホームページ:
作成日時:2020年5月29日 14時