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〔A〕





ぷつり、と糸を切って無意識に詰めていた息を吐き出した。




縫合は得意だ、それでも。現場に出ると気が張っているからか、集中すると無意識に呼吸を止めてしまっていたらしい。





息を詰めていたせいで血圧が上がったのか、ただ単純に気が抜けたのか。じわじわと額の傷が脈に合わせて痛み始め、一度痛みを自覚してしまえば、思い出したかの様に全身が痛みを訴え始めていた。





顔に出にくいタイプで本当に良かったと思いながら、白車へと足を向けると、小さな子供の姿が見えた。側にはも毛布を肩から掛けたあの新人くんがいた。ふと、顔を上げてこちらに気付いた新人くんは、はっとした様に立ち上がった。





「あ、あの…」



『怪我は。』



「こちらの子供を先にお願いします。」





視線を移した先には、目を真っ赤に腫らした子供は、あの時風に飛ばされた帽子をぎゅっと握り締めていた。



正直、子供の相手をするのは苦手だ。痛む体を宥めながら膝をついて、比較的優しく声を掛けた。





『こんにちは、何処か怪我はない?』



「…せんせい、けが、してる。」



『大丈夫、痛くない。…膝、擦りむいちゃってるね、絆創膏貼ろうか。ちょっと痛いかもしれないけど、触ってもいいかな?』





こくり、と小さな頭が頷いたのを確認し、素早く処置をする。恐らく傷に染みたのだろう、じわりと滲み出た涙を流すまいと必死に耐える姿に、手袋を外しそっと頭を撫でた。





『強いな。偉いよ。』



「…せんせい、ありがとう。」





子供の笑顔一つで痛みが和らぐなんて、中々自分も現金だな。なんて苦笑しつつ(勿論顔には微塵も出ていないが)、そろりと立ち上がり新人くんへと目を向けた。





『…何処か痛む所は。』



「いえ、それよりも先生の方が…」





それ以上言うな、と睨み付ければ瞬時に口を閉じた新人くんを黙って診察し、子供を任せたと短く告げれば心得たとばかりに強く頷いたのを見届け、先程から背中に刺さっていた視線の主の元へ、何でもない様に見えてくれと願いながら、機嫌の悪い彼の元へ戻る。





白車で患者を送り届ける間に、いつ急変してもおかしくない。さあ医者として、もう一仕事だ。





ぱちりと、一つ瞬きをした。

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うたプリ大好き?(プロフ) - 続き気になっています この作品はもう更新されないのでしょうか? (2019年8月30日 9時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
再びこなみ - 17 遥→はるか (2018年8月16日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
こなみ - 8 遥→はるか (2018年8月16日 9時) (携帯から) (レス) id: cb44cdb910 (このIDを非表示/違反報告)
東雲 昴流(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます!ふと思い出して書き始めたので遅くなってしまうかと思いますが、頑張ります…! (2018年7月28日 19時) (レス) id: ad54c4129e (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 続き楽しみにしております。 (2018年7月28日 17時) (レス) id: 15bef8530f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 昴流 | 作成日時:2017年8月18日 1時

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