コード・ブルー ‐もう一人の医者‐ (ページ29)

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〔名取〕

頭部外傷が原因で痙攣を起こす事は珍しい事じゃない。対処法だって分かっているから、自分でどうにか出来る筈だった。周りにいる救急隊員が新人で、完全に怯えて手伝ってくれないなんて事にならなければ。

「っ、ちょっと、手伝って貰えませんか？！」

意味を成さない言葉を呟き、一向に動いてくれない救急隊員に苛立ちが募っていく。初めての現場で混乱するのも分かる、だけど、これじゃ挿管も出来やしない、と焦り始めた時。手袋を換えながら走ってきたAが跳ね上がる体を抑えた。

『名取！抑えるから挿管しろ、終わり次第ヘリで患者の搬送任せる。』

「は、はい。」

時折大きく体をびくつかせる患者に少し手こずりながらも何とか挿管し、Aと場所を入れ替わる。胸元からペンライトを取り出し、目元を確認するとすぐに指示が飛ぶ。

『…名取、こっち代わるから搬送頼む。骨盤骨折がヘリ搬送だ。搬送終わり次第、すぐに戻って白車搬送付いてくれ。』

「分かりました。」

お願いします、と処置を任せて走り出した俺は、吹き抜けた風に何か嫌な予感を感じて、走っていた足を止めて振り向いた。何とも言えない不安感に、Aだから大丈夫だろうと言い聞かせて前を向いた。この胸を過ぎる一抹の不安を、見なかった事にして。

「搬送準備出来てます！」

「分かりました、すぐ搬送します。」

何もないと良い、と背を向けた俺は気付かなかった。背後で風に煽られて揺れるシートと、ゆらりと揺れた鉄板が、徐々に動いている事を。

安全確認の取れた現場は、絶対に安全だと思い込んでいた。

絶対なんて、ある筈が無い事を忘れていた。

ヘリで飛んだ空から見えたのは、ざわめく人々と、小さく見えた俺と同じ、青いフライトスーツ。

自分に出来る事をしろ、そう不器用に励ましたAを思い出して、一つ大きく息を吐いた。そして、足元にあるスイッチを踏んだ。

「こちら翔北ドクターヘリ。患者情報を連絡します。」

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来週最終回なんて信じたくない…！
藍沢先生…！藤川先生…！

沢山の方に読んで頂けて、感謝しかありません…！
これからも更新は深夜になること多いかと思いますが、
宜しければ見てやって下さいませ。

作者。