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第百四十三訓 追慕 ページ49

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すごく、すごく弱々しい声を出したのだと思う。

私の声を聞き取れていなかった妙ちゃんが不思議そうな顔をして「どうしたの?」なんて、 此方を覗き込む。

意識してしまったらその行動一つ一つが大好きなあの人とそっくりで。顔も声も全く違うのに、周りの景色と彼女がそうさせてしまうのだろうか。

もう会えないと思っていたのに、また会えたなんて錯覚までしているものだから、いよいよ私はおかしくなってしまったらしい。


分かってる、ミツバ姉はもういない。頭では分かっているし、理解も出来ている。でもそれを受け付けられない自分がいることも確かで、だからあんな錯覚までしてしまう。


過去は過去であり、ないものはない。振り返ったところで虚しくなるだけ。そう割り切ることが出来るなら人は争いなんて起こさないだろう。


生憎、無感情な機械として生きている訳ではないのでそんな風に思うことは私は出来ない。きっと一生。
それほど彼女は私の中で大きな存在だった。



…駄目だ、また暗い気持ちになってしまう。

切り替えるように頰を手で叩くと隣にいる妙ちゃんがビクッとした。申し訳ないと思いつつ手元を見ると、ボタンがしっかりと縫い付けられた私の制服が。



「制服、ありがとう。また今度ゆっくりお話ししようね」

妙「大丈夫?もう少し休んでいっても…」

「ヘーキヘーキ、心配かけてごめんね」



いつもと違う私の様子に違和感を感じていた筈なのに何も聞いてこない彼女は姉御と呼ぶにふさわしい。


どこまでも優しすぎる妙ちゃんは時々見せる怖い一面さえなければ完璧な女性だといつも思う。ダークマターを錬金する術もなかったらなお良し。


門まで付いて来てくれた妙ちゃんに改めてお礼を言い、志村家を後にする。空が明るいせいで分からなかったが、もうこんな時間か。




この夏の暑さにも慣れた頃、お盆の日にでも、彼女の所へ行こう。顔も声も料理の腕前だって全然違うけれど、ミツバ姉と似ている人がいて、手紙で書いた友達がその人なんだよと、話しに行こう。


この際だから話そうと思って話せなかったこと、日が暮れるまで全部話して、困らせてやろう。


ジンジンと痛む頰を強く叩きすぎたと後悔しながら歩く。時間が経っても空には竜の巣ような雲が浮かんでいる。

そろそろシータが落ちてきてラピュタに連れて行ってくれてもいいのに。かなり待ったと思うのだが…



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続編いきまーす→←第百四十二訓 思い出すのは



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設定タグ:銀魂 , 原作沿い , 逆ハー   
作品ジャンル:アニメ
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クローバー - タイトルの第が大になっていますよ (2022年10月23日 19時) (レス) @page25 id: f7867713b9 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - ミクさん» 洒落にならない数々のミス申し訳ありません。一通り目を通し修正してきました。ココがまだおかしい、という箇所がありましたらお手数ですがまた教えて頂けると幸いです。すみません。 (2021年8月5日 20時) (レス) id: d757d08cdf (このIDを非表示/違反報告)
ミク - 時々、坂田「銀さんたぶらかして」みたいな感じになって最初の「の前の名前が違っていることがあります (2021年8月5日 13時) (レス) id: c0f1b840e0 (このIDを非表示/違反報告)
柊ひな(プロフ) - MEIさん» ありがとうございます!テスト、なんとか終わりました!!テストお疲れ様です!2週間以上も前ですけど(笑) (2019年6月7日 7時) (レス) id: bb6b3491df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:柊ひな | 作成日時:2019年5月12日 12時

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