◇14 ページ14
．
．
あの夜は酔っていて
彼の部屋にどんな気持ちで入ったのか記憶にはなく
この覚えてるはずの広い玄関も
初めてではないのに
A「…お邪魔します」
紫耀「今日は1人で脱げるんだ笑」
ハイヒールを片足づつ脱ぐわたしに
そう、意地悪な顔で笑う彼
紫耀「この前は俺が脱がしてあげたのに笑 この靴」
A「……嘘。…わたし、…そんなに酔っ払って…
……本当、ごめんなさい。」
唐突な暴露に狼狽るわたし
振り返って彼を見たら
思ったよりも顔は近くにあって
紫耀「…じゃあ、責任とってくれる？」
それは少しだけ、憂いを帯びた目で
間近に響く彼の声は
いつもとは違うものに聞こえた気がした
紫耀「…なんてね笑 俺、そんなずるい方法使わないから」
そう言って、小さく笑った彼の考えてることは
やっぱり少しも分からなくて
返答に困っているわたしに
着替えてくるから座って待っててと言い残し
彼は別の部屋へ向かっていってしまった
落ち着かないリビングで
上質な革張りのソファにおとなしく座って待っていると
紫耀「今家にたいしたものなくてさ、コーヒーくらいしかないんだけどいい？」
Tシャツにゆったりとしたパンツに着替えた彼がマグカップを両手に持って現れ
わたしにそっと、コーヒーを差し出した
彼がコーヒーを淹れるのは
なんとなく少し意外だった
A「…ありがとう、ございます」
どんな顔をしていいのか分からなくて
目を合わせることもできずコーヒーを受け取ると
そのまま、わたしのすぐ隣に彼は座る
コーヒーを一口飲んだ彼は
何かを言いたげな表情をしていて
間接照明のだけが僅かに光を与えるこの部屋は
彼の綺麗な横顔をぼんやりと照らす
それは、気を抜いたら彼の手の中へ落ちてしまうような
そんな、危険な香りを漂わせていて
だから…彼のペースに巻き込まれる前に
彼が言葉を発する前に
わたしはそっと、掌を伸ばした
A「…あの、…今日は、これを返しにきて…」
差し出した鍵に視線を落とした彼
でも何故かその表情は、少し切なく見えて
紫耀「返さなくていいのに」
掠れた声が、静かに響く
彼の言葉は
いつも
紫耀「俺、そのつもりで渡したし」
勝手に人の心を惑わせて
目の前を…甘く痺れるスモークで
満たしていくみたい
．
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「平野紫耀」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たむ - めちゃくちゃ面白くて引き込まれました！！これを楽しみに仕事頑張ります！！更新される事を待っています(>_<) (2021年7月4日 3時) (
レス) id: 7855f798e1 (このIDを非表示/違反報告)
サンリオ(プロフ) - 更新されていて嬉しいです。ありがとうございます (2020年3月14日 16時) (レス) id: ff278406bf (このIDを非表示/違反報告)
ラピス(プロフ) - 初めまして。読ませて頂きました。確かにきっかけは何でもいいとおもいますよね。人を好きになるって力をくれますが…切なさとかもあったりして色んな感情を与えてくれたりしますよね。お話し楽しみにしてます。 (2020年3月14日 11時) (レス) id: a9f033db9b (このIDを非表示/違反報告)
Azuki(プロフ) - 初めまして。更新ありがとうございます！素敵なお話で楽しみにしていました。続きもとても気になります！応援しています。 (2020年2月27日 20時) (レス) id: 8005b02827 (このIDを非表示/違反報告)
わわ(プロフ) - みゆさん» コメントありがとうございます！！更新がんばります！ (2020年2月2日 21時) (レス) id: 1ed40d5049 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：わわ | 作成日時：2020年1月25日 19時
