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六話 ページ7

「お前を信じているから」


頭をとんかちで殴られたくらいの衝撃が頭に走る。

ぽかんと口を開けて冨岡さんを見つめる。

嘘の色は見えない。真実の色がただじんわりとにじみ出ているだけ。


『……そう、ですか』


そんなこと、言われるだなんて思っていなくて受け入れずらかった。

でも何度見たって彼の色は嘘偽りなく語っているから、信じざるおえなかった。


「任せた」

『………はい』


なんだか、流されたような気がしなくもないけれど、悪い心地ではない。

枯れたはずの涙がまた溢れてきそうで、苦しい。

こんなに惨めで、情けない僕を信じていてくれると、そう言ってくれてただ嬉しかった。


門を出て、冨岡さんの姿が見えなくなるまで手を振って、

僕は言われた通り、鬼を連れるその彼の元へと訪れるのであった。








元柱である、鱗滝さんという人のところに彼はいる。

先に鴉を飛ばし、彼がいると聞く狭霧山へと向かうことにした。


幸い、僕は鬼を狩る仕事が頻繁にくるわけではない。

お館様がご慈悲を与えてくださり、出来るだけ量を減らしてくれているのだ。

何故そんな無茶振りが成立しているのかと聞かれると、理由は二つ。


僕は海の呼吸を使いこなすことができないのと、

鬼を殺した後は罪悪感で立ち上がれないほど泣き喚いてしまうから。


その二つの理由からお館様も気を使ってくださり、立ち直れるほどの時間を与えてくれるのだ。

理由を聞くと本当に自分がどうして、どうやって柱として生きていられるのか不思議でならない。

鬼を多く倒したから、だろうか?そうすれば皆柱になれるのか?

正直、どういう風にすれば柱になることができるのかを深く知ることはなかった。

泣きながら必死に刀を振るって、ある日呼び出されたかと思えば柱とされたのだから。


あの時、大きくあの場で発言したことにみんなが驚いた表情をしていたのを覚えている。




 『僕は決して自分が柱であることを認めません。
 だから皆様も、僕を柱として扱わなくていい。
 見下してもいいし、偉そうに指図したって構わない。
 僕は柱じゃありませんから』




柱にでもなれたら、人は達成感などに満たされるものだと思う。

だけど、あの時の僕はそれを認められなかった。

技術も呼吸もままならない者が柱になんてなっていいものかと、そう思っていたのだ。

そして今も尚、その感覚は消えない。

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八雲(プロフ) - とても続きが気になります!!更新楽しみに待ってますね! (2019年5月27日 21時) (レス) id: ee1ccd9f95 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年5月5日 14時

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