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胸倉を掴まれている、そう気付いたのは降谷の声が発された瞬間だった、
「ふざけるなよ…」
あまりに瞬間的に、表情も確認出来ない程距離を詰められたことに気付いても、私は驚くくらい冷静でいる
「何が盾だ…守る為の身体…?お前の身体は、誰かの為じゃない…っお前のものだろうがっ!」
「そうだ、私のものだから誰の為にどう使うかは私が決める」
「っお前が傷付いて何になる!それが正義だとでも言うつもりか!?思い上がるな!」
「じゃあ見捨てろって言うのか!助けられる命を!止められる悪を自分可愛さに見て見ぬ振りすんのか、てめえは!」
降谷の言いたいことが理解出来ないとは言わない、ぶつかることは明白だった、こうなったら私たちは止まれやしない、それでもお前には伝えなきゃならない
「っ私が立たなきゃ誰が立つ!どんな強い意志を持ってたって身体が動かなきゃどうにもなんねえだろ!あの時のお前がそうだろ零!」
「っ…!」
どれだけの正義を意志を覚悟をこの男が持っているか私は知っている。そんな降谷でもどうにも出来ないことがある、そこで立たなきゃ私は何の為にここに在る?
「だったら…っ」
その目に宿る高温の青い焔、
「っお前は死んでも構わないって言うのか…!」
泣きそうで噛み付いてきそうな、到底言葉には出来ない表情に言葉が詰まりそうになる。死んでも構わない、か
「…構わない、とは言わないよ」
そんなことを降谷に言える日は来ない、きっと
「でも、誰かを見捨てるくらいなら、自分の意志に背くくらいなら……死んだ方がマシだ」
ぶつかる視線、強く噛み締められた奥歯が音を立てる。強い意志で創り上げられた降谷の顔が歪んでいく様をこんなに近くで見るなんて、少し前の私は想像もしなかった
「…っ死ぬな、って…俺の声はお前には聞こえないのか…A…っ」
聞こえなければ良かったと思うよ。私たちは近くにいすぎて、私は降谷の本心を、降谷は私の覚悟を知りたくない部分まで分かってしまう
分かっているのに、見ていない振りをして全力で駆け出して、それが誰の為か分からなくなってももう止まることは出来ないんだ
「ごめん…零…ごめん…」
硝子玉のように、ぶつかり合ったらお互いにヒビを残す、決してなくなりはしない傷。それでも透明に澄んだ志を持ったまま、
自分を大事にする、無茶はしない
欲しい言葉は分かってる、でも、それを言うわけにはいかないんだ。謝るしか出来ない私をどうか赦さないでいて
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時