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息を切らし、勢い良く入ってきた降谷は私の姿を見て目を大きく見開き、一瞬だけ立ち止まった。松田に言っていたように注意しようとした看護師の声を振り切ってこちらに近付いてくる。
何を言われるだろうか、と少し身構え降谷を見ているとどんどん顔が迫ってきてそのまま、
「っ、な、なに、すん」
「この…大馬鹿野郎！」
頭突きを食らわされた。
横で松田は大笑い。そりゃそうだ、だってその頭突き、痛いのは降谷だけで私には何のダメージもない。けれど、それすら忘れているんだろう。あんなに焦った表情の降谷は見たことがなかったのだから。
大馬鹿野郎、と怒鳴られた直後、自分の顔に手を当て黙り込んだ降谷。松田は何も言わずに片手を上げて出ていった。
「…言ったよな、制御しろって、自分の感情をセーブしろって、何回も言ったよな」
「…うん」
「行くなって、言ったよな」
「…言った、ね」
伸ばされた降谷の大きな手が、顔に触れ、傷に触れ、
「…お前が死んだら…どうしようかと、」
相変わらず隠された顔は見えなくて、私の腕も動かない。この腕が動くのなら今すぐ、降谷の顔に手を伸ばすのに、
私はあの時、降谷の静止を振り切った。自分では止まれない私を止めるのはいつだって降谷だ。警察学校の頃からずっと。その言葉を聞かなかったのは初めてかもしれない。
「…手を」
「手…？」
「自分じゃ動かせないから」
顔を覆っていた手を外し、握った私の手に降谷は自分の顔を寄せた。頬も手も濡れている。降谷の行動全てが私が生きていることを確認するかのようなもので、君を、みんなを悲しませたかったわけじゃないのに私はこんなに傷付けた、多くを。
「話さなきゃ、いけないことがある」
少なくとも降谷には話さなければいけない。それを降谷が分かってくれなくても、私の意志を伝えないで動くのはやっぱり違うのだと思うから。
決して逸らされないその碧い瞳を見る度、見透かされているような気持ちになる、私の勝手な覚悟全て。
「A」
ちゃんと聞こえるよ、
「お前を、死なせはしない」
その鼓動まで聞こえるよ、繋がった手から
××××××××
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作者名：真琴 | 作成日時：2018年4月20日 23時
