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「今はやめとけ、俺が見とくから」
背後で緑川の抑えた声が聞こえた。
立て続けに入った合同捜査会議、無論降谷は欠席の為、警備企画課としての対応は私がするのだが、連日の忙しさに加え元々予定のなかった捜査まで入ってきたものだからどうにもこうにもあまり余裕がない。別に私は怒っているわけではない、苛ついてはいるが。
本日何件目か数えるのも嫌になった頃、エンターキーを叩いた勢いのまま立ち上がった、どうやら相当な強さでデスクを叩いたらしく全員がこちらを見ている。
「悪い、緑川」
「え、あ、何だ?」
「一時間経ったら起こして……」
「死んだ…」
落ちきる直前頭を巡る、合同捜査…捜査指揮は、計画は……やらせたくない、行かせたくない、必ず今回は負傷者が出る。出ないわけがない、希望的観測はいらない、指揮を降谷に頼めないだろうか、私が現場に出れば少しは…飛び交い、纏まらない、甘いか、甘いよな、覚悟を持ってみんなここにいるのに、
私は、
「………仮眠、室…?」
意識を手放してから悶々と何かが頭を巡り、それも消え失せて目が覚めると、デスクではなくそこは仮眠室だった。ぼんやりしたまま起き上がると身体に掛けられていたジャケットが落ちる、
自分のものでないそのジャケットを掴んで企画課へ走った。
「っ降谷!」
「起きたか」
「悪いな、A。一時間過ぎちまって」
「それはいい、降谷」
「何だ」
「捜査指揮を頼みたい」
「…断る」
「聞いただろ、合同捜査の件」
「聞いた上で断ると言っている。お前が指揮を執ればいい」
「私は現場に出る」
「駄目だ」
「何故」
「何度も言ったはずだぞ。お前は指揮を執る側だ、何の為にその立場にいる」
「今回は危険だ、負傷者が出る、必ず。私がその場で動く、その方が」
「その方がなんだ。怪我を恐れて現場に立てない奴なんてここにはいらない。お前が現場にいようがいまいが同じことだろ」
「完全に防げないのなら影響は最小限にする、人員の不足は捜査の妨げだ、だから私が出る、お前が指揮を執れ」
「話にならないな。その理由は、だからに続く言葉じゃない」
「無差別だぞ」
「承知の上だろう」
「…っ私が行けば済む話だろ!出さなくていい犠牲を払う必要なんかない!」
「だったらその犠牲とやらにお前もカウントされてるのか」
碧い瞳は様々な感情を孕んで私を見つめる。
「私は盾だ、何回も言わせるな」
その言葉を最後に口にしたのは何時だろう。
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作者名:真琴 | 作成日時:2018年4月20日 23時