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・松田視点
聞き慣れない音で目が覚めた。規則正しい音、とんとんとん、ああ、そうだった、ここはAんちだったんだと意識がそこまで回復した辺りで影が近寄ってくる、Aだ。
「おはよう、飯だぞー」
隣にいた萩原を起こしに来たようだ。あいつ、昨日俺より先に落ちてなかったか？まだ寝てたのか。
旨そうな匂いに誘われて置かれた料理の前に座る。Aは流石と言うべきか信じられないくらい自分が食べるせいか料理が上手い。Aと一緒にいなければ、なかなか手料理なんて食べる機会はないから自然と箸も進む、
「旨い」
「だろ」
「自分が食べたいからとは言え、旨いよなあ、お前の料理」
「だから、てめえは一言余計なんだよ」
どうもAの家は落ち着く、気を張る要素は何もない。だから寝落ちする。俺がAの行動に口を挟んだり、意に反する行動を取ると必ず文句で返してくるのに、この行動に関しては一度も何も言われたことがなかった。
俺たちと話しているAはいつでも嬉しそうにしている、みんな元気なら良かった、確か昨日もそんなことを言っていた。
首元の傷が目に付いたのはだいぶ酔いも回った頃。ああ、あれはいつの傷だったか、確かそこそこ大きな傷だ、背中まであって、あの傷の時も
ほら、ちゃんと治った
そう見せてきた。一番酷かった首元はまるで何かに噛み付かれたような跡を残し、本人は少しも気にしていない。何でだよ、何で、
いつも行っちまうんだ、お前は。
その時に噛み殺した言葉が喉元まで出かかり酒を煽った。例えばAにそれを伝えたとして、俺が肩を揺さぶって訴えたってきっとこいつは止まらない。
違う、きっと、止まれない。
止まり方を知らない、不幸なことに
俺たちがそれを教えてやることも叶わない
「おかわり」
「よく食べるねえ、もっと大きい器に変える？」
「いや、それAサイズでしょ…」
「松田は？いる？おかわり」
「あー…いる、」
お前はずっと変わらない。出会った頃のままだ。近くにいるのだからよく分かってる。あの目をして、走り出す、止められない、号びが声にならない、
そんな夢で目が覚める、その夢に救いはない。
夢であることを確かめるまで、寝ぼけたふりを続けるんだ、俺は臆病だよ、A
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作者名：真琴 | 作成日時：2018年4月20日 23時
