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こんな時でも優しい良規くんは、下まで送ってくれようとするから、それは断って玄関でお別れにしてもらった。
「最近もギター弾いてるん？」
「弾いてるよ」
スニーカーを履いてきて良かったと思った。
靴紐を結び直す間、良規くんは私のトートバッグを預かってくれた。突然ギターの話が出たのは、そのバッグにプリントされたロゴが有名なロックバンドのものだったからだろう。
もう二度と会わない二人の会話がこんな世間話でいいものなのかと思いながら答えた。答えてから、やっぱりもう少し思い出話っぽいことを言ったほうがいいかも、と思い「貰ったピックも使ってるよ」と付け足した。
「あ〜懐かしいなぁ」
「覚えてた？」
「覚えてるよ。俺が一番気に入ってたやつあげたもん」
「え、そうやったん？」
「うん。言うてなかったっけ？」
「知らんかった……大事にする」
最後だからと気を抜いて、そんなことを言ってくるのがズルい。みぞおちの辺りがキュッと縮むように痛んだ。毒だ。このままいたら、うずくまって動けなくなってしまう。そうなる前にトートバッグを受け取った。
「ありがとう」
「ん、元気でな」
「うん、良規くんも」
「バイバイ」
「バイバイ」
ドアの外に出てから、もう一度良規くんの方に向き直った。寂しそうに、でも口角を上げた笑顔の作り方が三年前と同じだった。
「正門先輩」
良規くんが弾かれたように瞬きをした。
うつろだった目にくっきりと"私"が映った気がして、言わなきゃと思った。下まぶたと頬が緊張で押される。
「好きでした」
ドアが閉まる音に重なって良規くんには聞こえなかったかもしれない。だけどせめて、扉の向こう側の良規くんが数秒間だけ動けずにいてくれれば良いなと思った。
私の恋が終わった。
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黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
