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ピロンっと通話の切れる音がして、布団の中が無音になった。
そこからの私は早かった。
アリバイ造りのメイクをして、部屋を出た。
リビングはお取り込み中だったから、私が小さな声で言った「いってきます」は聞こえていなかっただろう。
でも、言った。言ったという事実は大事だから。
・・・
「ごめん、家帰ってたな。何ならお風呂も入ってたんとちゃうの？」
詰めの甘い嘘は、到着した玄関先であっさりと暴かれてしまった。
しかもバレた理由が"由季とおんなじシャンプーの匂いする"だったから、余計にショックで、恥ずかしくて、私は目頭に力を込めていろんなものを我慢した。
"正門先輩"
二人でいるといまだにそう呼びそうになる。
三年前、私は高校二年生で、正門先輩は三年生だった。
軽音楽部の先輩。それ以上でも以下でもなかった正門先輩を好きになったのは、その年の冬のことで、もう引退したはずの先輩が息抜きに訪れた部室で、私は一人でギターを弾いていた。
"Aのギターの音好きやで"
そう言って、先輩は部室に置きっぱなしにしていたピックをプレゼントしてくれた。それだけ。
それでも、ピックを受け取る時に触れた先輩の左手の指の腹が硬かったこととか、薄いグリーンのカーテンから浮き出た埃が西日でかき混ぜられて光ったこととか、あの一瞬だけやけに綺麗に見えた部室でのワンカットが、今も頭から消えない。
単純で、それゆえに混じり気なしの、完全な恋だった。
それから半年が経って、私のライブを見に来てくれたお姉ちゃんと、OBとしてライブに出演してくれた先輩が出会って恋に落ちるとは、微塵も思っていなかったけど。
「ひとまず上がって」
リビングのカーペットの上に向かい合って座る。
サイドデスクぐらいしかない小さなローテーブルの上で、良規くんがお茶を淹れてくれたプラスチック製のカラフルなコップだけが、今からボードゲームでも始めそうな明るい調子でいる。
「もう知ってるかもしれへんけど、由季と別れたんよ」
いつもと変わらないゆったりとした口調。
頷いただけの私を見て、良規くんは続ける。
「由季は俺とAちゃんは仲良くしてて、て言うんやけど」
「うん」
「俺は、Aちゃんと会うのも結構辛いんよ。やから、今日はお別れのつもりで。いきなり呼び出してごめんな」
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黒雷憂無(プロフ) - コメント失礼します。神様のねがいごとの長編見てみたいです！ (3月10日 1時) (
レス) id: 3082381280 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - シキさん» シキさん、コメントありがとうございます！うわ〜嬉しい！ぜひ長編をお待ちくださいませ！ (2022年12月7日 22時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - コメント失礼します！神様のねがいごと、めちゃくちゃ続き気になります！よければ長編楽しみにしてます♡ (2022年12月7日 3時) (レス) @page39 id: fa47139e50 (このIDを非表示/違反報告)
三十谷みそ(プロフ) - yuksaさん» yuksaさん、コメントありがとうございます！読みたいと言ってもらえると書きたくなりますね(笑)嬉しいです。続きアップできるようにがんばります。 (2022年12月3日 0時) (レス) id: 0083c24134 (このIDを非表示/違反報告)
yuksa(プロフ) - はじめまして。神様のねがいごとの続き、すごい読みたいです。面白かった！ (2022年12月3日 0時) (レス) id: 1137319ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三十谷みそ | 作成日時：2022年4月6日 23時
