13.言えない言葉 ページ13
…、
……ん、
…ちゃんっ…
.
智「Aちゃん！」
私を呼ぶ大野さんの声で目を覚ます。
「…大野さん、」
凄い真剣な表情で心配そうに私を見てる大野さん。
智「大丈夫？凄いうなされてたけど…」
起きて気付く。
…ホントだ、凄い汗。
智「嫌な夢でも見た…？」
「……大丈夫」
智「今日、水族館やめとく？しんどそうだし…」
.
ふと窓を見ると
もうすっかり日は登ってカーテンから光が差してる。
「…大丈夫。いける」
智「…、そう…。じゃあ起きて準備しよっか」
.
.
.
.
智「よしっ！準備出来たしそろそろ行こうか」
いつもより綺麗に整えられた髪。
普段はしていない金のネックレス。
…案外、ちゃんとしたらなんか…チャラいな。
.
私が玄関に座って靴を履いていたら
玄関の外でドアを開けて待ってくれてた大野さんが
智「…Aちゃん、ごめん」
凄い申し訳無さそうに私を見ている。
智「今、学童から連絡があって…」
.
そこで大野さんが何を言いたいのかは予想がついた。
「…仕事。行って来て下さい」
言い難いだろうから、私から言ってあげる。
.
智「…ごめんね。ホントは行きたい気持ちやまやまなんだけど…」
「しょーがないですよ」
智「…Aちゃんも来る？」
そんなの、私が行ったところで…
邪魔になるだけだし。
.
「…行かない。家でいる」
智「そう…、じゃあ、行ってくるね。…今度は絶対行こうね」
そう言って、
私に金のネックレスと何かあったときの為にと
３万円を渡して大野さんは仕事に向かった。
.
…結局こうなるんだ。
てか、３万円も使わないし…。
渡された金のネックレスと３万円を握り締める。
.
言える訳ないじゃん。
私も行きたい…って、
.
.
今更、
寂しいとか…
.
.
言える訳ないじゃん。
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作者名：な り き | 作成日時：2017年8月7日 1時
