そばに居るから。 2 (ページ39)

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side龍友

龍「え、？」

そろそろ朝ごはんの準備をしなきゃ、と思って重いまぶたを擦りながら階段を降りようとしたとき。

突然の、大きな音。

ドアが乱暴に閉められたような音。

こんな時間に。

みんな深い眠りに落ちていて、いつも僕しか起きていない時間に。

珍しい出来事だからだろうか。

それとも、何かあるのか。

妙な胸騒ぎがおさまらず、慌てて階段を駆け下りる。

龍「あれ、僕、の、くつ…」

いつもと変わらず、みんなのくつが並んでいる。

なのに、それは6足しかない。

ないのは、僕のくつ。

龍「だれ、が、？」

僕のくつがないだけなのに、妙な胸騒ぎはどんどん膨らんでゆく。

くつが1足なくなるくらい、そんなに辛いことではないはずなのに。

そこまでお気に入りだったわけでもないのに。

なんで、どうして。

胸騒ぎは次第に、大きな不安へと姿を変えてゆく。

大きくなった不安は、僕を包み込んで。

落ち着け、落ち着くんだ。

こんな朝に起きれるほど朝に強い人はいない。

だけど、大きな音。

なくなった僕のくつ。

誰かが僕のくつを履いて、外へ？

じゃあ、誰が？

僕のくつを履けるのは…？

サイズ的には、亜嵐くんか玲於か…

龍「…涼太っ！」

弾かれたように身体が軽くなり、降りた階段をもう一度駆け上がる。

"涼太、足ちっせぇな"

"龍友くんのくつでも、ちょっと大きいかも"

"間違えて僕の履くなよ"

"ないでしょ、あるとしたらわざとだよね"

たしか、シェアハウスを始めたばかりの頃。

こんなこと言ってたっけ、なんて記憶が浮かぶ。

バンッ！

ノックもせず、僕の隣の部屋のドアを開ける。

なんで、なんで。

なんでいないの？

なんでベッドに温もりがないの？

さっき出ていったのは、涼太だ。

けどベッドは冷たい。

じゃあそれまで、どこにいたの？

龍「涼太、涼太っ！」

僕は頭で考えることは苦手だ。

何も考えずに、ただ突っ走る。

だから、そのまま僕も家を飛び出した。

昔の記憶。

僕のくつと間違えるなよと言ったとき。

"あるとしたらわざとだよね"

そう言った涼太。

じゃあこれは、涼太からのメッセージなのか？