そばに居るから。 2 (ページ18)

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side涼太

龍友くんに首を見られたとき、もう終わりだと思った。

またひとりになるんだって。

ひとりぼっちなんて、とっくに慣れていたはずなのに。

こんな俺に何も聞かず、それでも傍に居てくれる龍友くんは、いつしか俺の中で特別な存在になっていた。

嫌われ、除け者にされるなんて慣れている。
ひとりぼっちだって、暗闇にだって慣れている。

なのに龍友くんが離れていくことだけは、怖くなっていた。

龍「あのさ、なんて言ったらいいんやろ…」

そう少し黙り込んだ龍友くんは、俺を抱きしめたままこちらを見ることなく、また口を開いた。

龍「僕は涼太の味方やからな。ずっと一緒におるから」

この人はエスパーなんだろうか。

俺の求めている言葉を、倍以上の温もりを加えて俺にくれる。

だけど、また裏切られたら？

母さんを信じてここまで生きてきて、それは間違いだったんだって今気付いた。
毎日変わる父さんを毎日信じてきて、毎日辛い苦痛を与えられる。

じゃあ龍友くんを信じてもまた同じ？

頭の中ではちゃんとわかってる。龍友くんは裏切るような人じゃないって。

だけど、心が追いつかないんだ。

いつまで経っても何も言わない俺を、龍友くんはいつまでも抱きしめてくれていた。

そして優しく頭を撫でて言った。

龍「いきなり信じろなんて言わんよ。涼太のペースでいい。やけど覚えといて。僕は涼太の兄ちゃんになるから。いつでも頼ってくれてええんやで」

黙り込む俺を嫌がる素振りもなく、ウザがることもなく。

ただただ、優しい言葉に優しい言葉を重ねてくれる。

涼「俺の、ペース、」

龍「おん」

独り言のつもりが、龍友くんには届いてしまったようで。

涼「一生かかる、かもだよ？」

龍「全然ええよ」

涼「おっさんになってるかもだよ？」

龍「おじいちゃんになってもずっと一緒におるよ」

涼「一生、信じれなかった、ら、？」

怖かった、聞くのが。

だけど出てしまった言葉は消せない。

耳を塞ごうとしたとき、龍友くんが僕の目を見て笑った。

龍「そんときは…来世に期待、かな？」

前世の記憶なんてあるかなー？なんて言いながら豪快に笑った龍友くん。

あぁ、この人なら。この人になら。

裏切られてもいいかなって。

信じてみるのも、悪くないかなって。

俺が初めて興味を持った人。

一度くらい、母さんでも父さんでもない、自分自身の感情を信じてみようかなって思えたんだ。